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あります。アライアンス通りのアンクル・トッドの店です。このまま、ボートで旧市街の北の水域を西へ進んで、スキッドモア・ストリートを南へ下れば、すぐです。
相変わらずごちゃごちゃした店内。アンクル・トッドは左目に眼帯をしていました。時計の掃除をしていたら、バネが飛んで、目にぶつかったらしいです。わたしたちが持ち込んだフィルムを見るのに映写機を使わせてくれました。奥の物置き部屋の真っ白な壁にレンズを向けて、そこに映写開始です。
エロ映画だと思っていました。ただ、これはジーノ曰く、ハードコアと呼ばれるものだということです。わたしやエレンハイム嬢がポルノと言われて思い浮かべるものはソフトコアと呼ばれているもので、わたしたちの頭脳では思いつかないようなことをするのがハードコアだというのです。鶏姦、暴力、児童に対する暴行。このフィルムでやっていたのは殺人です。腹の大きな太った男が裸で怯える八歳くらいの少女を大きなナイフでバラバラにするのです。
「でも、安心しな。バラバラにするシーンから別のフィルムをつなげている。バラバラになっているのは赤い水の入った人形だ」
でも、太った裸の男が裸の女の子ににじり寄るシーンは本物なわけです。親は一体何を考えているのか、本当に分かりません。注射一回分の麻薬のために、自分の娘をこういう輩に、こんなふうに売り渡す連中がいることに義憤を覚えずにはいられません。
はっきり言って不快極まりないですが、わたしは最後まで見ました。フローレンスの従弟はアンシュター夫妻は本当にヤバいやつに関わったと言っていました。そして、いま、わたしが見ている、この太った男はわたしの基準からすれば、本当にヤバいやつです。何か関係があるかもしれません。そのことはジーノも考えたらしく、フィルムを巻き戻して、太った男の体がカメラのほうを向いた瞬間、リールを止めました。髪が豊かでどうもごま塩らしく、口髭をたくわえているので顔の造作が細かくは見えませんが、左胸に恋のキューピッドが弓から矢を放った入れ墨があります。ひどく薄れていて、ジーノ曰く、こんなデブになる前に彫ったのだろうと。
「案外、いい手がかりかもよ」ジーノがいいます。そして、四つ切紙を入れ墨の上に重ね、鉛筆でそっくり書き写していきます。「入れ墨屋をいくつかまわって、これを彫ったやつを探せばいい。この街の人間なら、名前が上がるだろ」
ジーノは頭がよくまわる人物です。それは認めましょう。




