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ロンバルド通りの我が家に帰ると、エレンハイム嬢が先に帰っていて、アザラシのハンバーグを食べ、そして、わたしが絶対に意味がないと首をふりながら、潜水マスクをつけたまま、水を張った洗面器に顔を突っ込みましたが、潜水中のように話せませんでした。
「効果があると思ったんですけど」
わたしは髪から水を滴らせながら、エレンハイム嬢の呼称を闖入ペンギンに戻すかどうか考えました。
「お話したいことがあるんです。わたしがあのギャングたちに狙われた理由に関わることです」
ミリオネア・チャーリーのことはもう過去の出来事です。いまは新しいトラブルが三つも立て続けにやってきているのです。すると、
「三つのギャング団にも関わる話です。明日、わたしと潜ってもらえますでしょうか。お見せしたいものがあるんです」
わたしはうなづきました。本当はバディで潜るのはあまり気が進みません。しかし、わたしが単独で潜るのを見れば、ジェファーソン弁護士、ビリオネア・ジョー、ホレイショ・ギャヴィストンの目にどう映るでしょう? ここはエレンハイム嬢の提案に乗ったほうが良いようです。とはいえ、その先にあるのは何らかの秘密の公開なわけですが。
しかし、こんなこと、どうってことはありません。三つのギャングに脅しまじりに誰それを殺せと言われ、会う人間全員に暗殺者と思われたことに比べれば、まだ軽いです。何より、もう最悪の出来事が起き尽くしたので、今日はもう安らかに過ごせるでしょう。
午後十時。そう思って、わたしは床につきました。




