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お菓子の誘惑は

作者: 黒崎メグ

 お夕飯は母特性の餃子だった。それだけでご飯が進む。


 湯気のたつ大盛りの白いご飯を、ぺろりっと平らげて満足できたはずだった。食べ終わってこれ以上何も食べないようにしっかり歯磨きまでして、バラエティ番組を見ていたわたしを誘惑するのは、いつも母だった。


「ねえ、ゆみ、アイス食べる?」


 答えを聞き終わらないうちに、母は冷凍庫から棒付きのバニラアイスを出してきて食べ始めた。それをできるだけ見ないようにして、テレビのチャンネルを変えることでやり過ごす。


 我慢だ。我慢。


 最近、わたしの体重は三キロも増えている。それを母は気づいているのだろうか。心持ち顔周りが丸くなったので、もし気づいているのなら、罪深いことこの上ない。母のご飯は美味しすぎるし、こうやって間食に誘うのもいつも母だった。母は年齢的に、体型で困ることは少ないだろうけど、高校生のわたしとしては、少しの差が大きな差だ。


「お、うまそうだな!」


 お風呂から上がってきたばかりの父が、母の食べているアイスを見て声を上げた。父は、迷うことなく冷凍庫を開けてアイスを取り出している。


 我慢するわたしの横にやってきて、父はテレビを見ながらアイスの包みを開けた。ほんのりバニラの香りが漂ってきて、ごくりっと思わず喉が鳴る。


 どうして隣で食べ始めるかなぁ。


 ちょっと気持ちが揺らいで、思わず父がアイスにかぶりつくのをガン見してしまった。


 父は気にせずアイスを頬張る。母が「あんたも食べればいいじゃない」と呆れたように呟いて、わたしにアイスを渡してきた。


 我慢だ。我慢。


 呪文のように自分に言い聞かせて、それを無視しようとしたけれど、「これが最後の一本なんだけど、いらないなら、わたしが食べちゃうわよ」と母がアイスの包みに手をかけた、その時だった。


 ぷつりっと、そこでわたしの我慢の糸が切れたのは。


「いる!」


 母からアイスを受け取って、頬張るとそれはとても素敵な味がした。


 家族三人で、仲良くアイスを食べる。


 わたしの我慢は、今日もこの誘惑には勝てなかった。





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