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13-7 VSローブの三人組(中編)


「ハッ!」


「おっと、あぶね!」


 ローブの男が右手を翳すと、その手の先から逃れるように龍信は姿勢を低くする。すると、龍信の髪を何かが掠めた。


(見えない衝撃波ってところか。今のところは手から真っ直ぐにしか出してこないけど、ブラフの可能性も視野に入れとかないと)


 次々と衝撃波を放つローブの男に対し、それを避けるために周囲をグルグルと走り回る龍信。両手には太鼓バチを持ち、正面には鼓面が浮かんでいる。それを維持するだけで相手に反撃をチラつかせ、下手に動けないようにさせていた。

 その作り出した時間の中で、龍信はローブの男に対する対策を考える。


(距離を詰めないから接近が苦手ってワケでもなさそうだ。むしろ、あれは誘ってる)


 龍信に対して距離を詰めず、ただ衝撃波を放ち続けるローブの男。そこに必死さは感じられず、余裕が感じられた。


(なら、あえてそれに乗るか!)


 ニヤリと笑う龍信。その直後、両手のバチで二回鼓面を叩く。ローブの男は二回跳躍し、龍信が起こした爆発を回避する。この回避によって生まれた僅かな隙を見計らい、龍信はローブの男に駆け出した。


「むっ………!」


 向かって来る龍信に対し、両手を掲げる。その両手の射線に入らないようにジグザグに移動し、狙いを狂わせる。その最中で、龍信が三回鼓面を叩く。

 ローブの男は音を聞くと僅かに身じろいだが、その場からは動かない。すると、ローブの男の周囲を囲うように爆発が起こった。


「チッ! 目くらましか!」


 爆発のせいで地面の砂も巻き上がり、爆発の煙とも相まって視界が悪くなる。しかし、魔力感知で居場所を察し、即座に後ろへと振り返った。


「甘い!」


 そう言うとローブの男は拳を握る。そして、衝撃波を纏った拳を煙の奥に見える影に向かって叩き込んだ。

 ドンッ、と大きな打撃音と共に衝撃波の余波によって煙が晴れる。確かな手応えにローブの男は笑みを浮かべていたが、自身が殴った物の正体にそれは驚きへと変わった。


「な!? 太鼓だと!?」


 ローブの男が殴ったのは龍信が作り出した鼓面であり、その奥で両手の太鼓バチを右側面に振りかぶった龍信がニヤリと笑っていた。


「残念だったな」


「ぐっ!」


 龍信の姿を捉えると仰け反るように体を引き、距離を取ろうとする。しかし、既に龍信の間合いであり、逃げ出すにはあまりにも遅かった。

 龍信の持つ太鼓バチに炎が灯る。そして、燃え盛る太鼓バチを龍信はローブの男の腹目掛けて振り抜いた。


「爆龍強打!」


「がはっ!」


 ドンドンッ、と燃え盛る太鼓バチがローブ男の腹に叩き込まれる。その威力に息を吐き出し、五歩ほど後ろへと後ずさる。しかし、かろうじて意識は失っておらず、口の端から涎と泡を垂れ流しながらも必死に踏み止まる。

 そんなローブの男の腹には、燃え盛る二つの火球が張り付いていた。その火球は収束するかのように縮まりながら腹に押し込まれていき、眩い光を放ちながら大爆発を起こした。


「ぐああああああああああっ!!!!!」


 体がくの字に曲がり、悲鳴を上げながら後方へと吹き飛んでいくローブの男。そのまま巨大な岩に激突し、その岩を砕くことでようやく止まった。

 体からは小さく黒煙を噴き上げ、ローブはおろか上半身の服は完全に焼失。そして、砕けた岩の破片に埋もれながら四肢を投げ出した状態で意識を失っていた。

 そんなボロボロの状態になった男に、龍信は気まずそうに呟いた。


「やっべ。やりすぎた………」





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