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13-5 ローブの三人組を追いかけて


 装置を持っているローブの三人組が潜んでいる春達の存在に気づいた次の瞬間、高校生達と警察官二人を除いた全員が一斉に動き始める。

 春達は物陰から飛び出し、ローブの三人組は一人が異界(ボイド)への穴を開く。


(なるほどな。一人は交渉、もう一人は完全に周囲への警戒。そして最後の一人は同じく警戒といつでも逃げ出せるように穴を開ける準備をしてたわけか)


(徹底されたフォーメーションだな。しかも、かなり慣れてる)


 ローブの三人組の対応の早さを分析する十六夜と龍信。そして、相手がただ者ではない事を再認識する。双方が同時に動き出す中、警察官は一歩出遅れる形で飛び出し、高校生達は未だに状況が把握できていなかった。


「な、なんだ!?」


「何が起こってやがるッ!?」


 忙しなく首を動かし、周囲を見回すことしか出来ない四人の高校生達。その間にローブの三人組は異界へと逃げ込んでしまう。

 それを見た龍信は即座に指示を飛ばした。


「警官の二人と奏多は高校生達を! 残りの全員で異界に逃げた三人を追うぞ!」


「分かった!」

「「了解です!」」

「「「「了解!」」」」


 龍信の指示に従い、奏多と警察官の二人は高校生達に向かう。春達はローブの三人組を追いかけようとするが、異界への穴は三人組が通り抜けた後すぐに閉じられてしまった。


「穴が塞がった!」


「任せろ!」


 春が速度を上げ、一番最初に異界の穴が開いていた場所に辿り着くと右手を翳す。その瞬間、閉じられたはずの異界の穴が再び開いた。


「よくやった!」


「さすが!」


 その速度に感心すると共に、龍信と耀は春のファインプレーを褒める。そして、春が開いた穴に続々と飛び込んでいく。そして、最後に春が穴を通り抜けると異界の穴はすぐに閉じられた。

 その十秒にも満たない時間のやり取りを、残された高校生達は呆然と見ていた。


「一体何なんだよ………」


「ボーっとしてる余裕あるのか?」


「「「「っ!?」」」」


 高校生達は驚くように後ろへ振り返り、声を掛けて来た奏多を見る。眼鏡の奥の目つきは鋭く、左に並ぶ警察官よりも迫力がある。警察官達は警察手帳を取り出し、高校生達へと威嚇するように見せた。


「警察だ」


「それと魔法防衛隊員だ。とりあえず、大人しくしてくれるならこっちも手荒な真似はしない。どうする?」


「………くそ」


 どうすると問いつつも、低い声音と鋭い目からは選ばせる気が全くないことが読み取れる。高校生達は冷や汗を流し、そのうちの一人が恨めしそうに愚痴を吐き零した。







 異界へと逃げたローブの三人組を追って異界へと突入した春達。そこには変わらず荒れた大地と雲に覆われた薄暗い空が広がる不気味な空間であった。そして、眼前に背を向けて駆けていくローブの三人組を捉える。

 その足を止めようと耀・十六夜・篝が魔法の準備を始めるのと、ローブの三人組が追って来た五人に気づくのは同時であった。


「白の飛刃!」


「雷鳴拳!」


「フレイム・バレッタ!」


 耀の光の刃。十六夜の雷撃。篝の炎の弾丸。これら三つの魔法がローブの三人組を襲う。しかし、その魔法が直撃することは無かった。

 六本の光の刃は剣を持ったローブの男に全て斬り伏せられる。雷撃は突如として現れた喰魔とは違うモンスターに遮られる。炎の弾丸もまた、一人が手を翳すと何かに弾かれるように軌道を変えてしまった。


 自身らの魔法が防がれたことで不機嫌そうに目を鋭くさせる耀達。そこから間髪入れず、龍信が追撃の準備を整える。魔法で作り出した太鼓バチを両手に持ち、正面に現れた鼓面を三回叩いた。

 ドンドンドンッと太鼓の音が鳴り響く。それと同時にローブの三人組がその場から急いで跳び退く。跳び退いた三人組が立っていた虚空には突如として爆発が起こり、地面を僅かに黒く焦がしていた。


 そこで互いに動きを止め、相手を牽制するかのように睨みあったまま動かなくなる。そして、緊張感が漂う中で春が小さな声で呟く。


「逃げ出すときの動きから分かってはいたけど、強いなこいつら」


「だな。龍信さんの魔法も魔力を感知して躱しやがった」


「初見で躱されることは早々無いんだけどな」


 龍信の魔法は初見では対応し辛く、その能力の全容を分析することは難しい。魔力感知がままならないのがほとんどのDランクが相手なら無類の強さを誇る。しかし、それを対応してきたというだけで春達の警戒心を引き上げるには十分であった。


「これからどうします? さっきので相手の魔法が見れましたけど………」


「とりあえず相手は分断する。四人には二人ずつに分かれて貰いたい」


「良いんですか? 五人で連携して三人を相手にした方が………」


「いや、連携()()()()事より連携()()()方が厄介そうだ」


 ヒソヒソと小声で作戦を相談する春達。その中で篝が分かれることに疑念を抱くも、龍信はそれでも分断作戦を推した。そこまで龍信が強く言い切り、春達四人の中でいつも作戦を立案する十六夜が異議を唱えないことからも納得する。


「桃山の魔法を弾いた奴は俺が相手をする。魔獣を盾にした奴を桃山と白銀。剣士は黒鬼と立花で相手してほしい」


「いや、ペアは俺と篝で魔獣使い。春と耀で剣士だ」


 十六夜が組み合わせに異議を唱える。ランクと年齢が上の相手に対してかなり生意気な言い方だが、龍信は気にした様子はなく冷静にその理由を尋ねる。


「理由は?」


「あの剣士相手なら接近戦で高い連携を取れる必要がある。なら、俺と春じゃなくて春と耀だ」


 そう断言する十六夜。

 春との付き合いは耀より十六夜の方が圧倒的に長く、戦闘において高度な連携を取れることを龍信は知っている。その上で十六夜がそこまで断言してくるということは、それほどまでに差があるのだろうと龍信は思った。


「分かった。それでいこう」


 龍信は十六夜の提案を受け入れる。そして、十六夜よりも春と連携が取れるという耀への期待を高まらせた。

 そして、ローブの三人組もまた春達に聞こえぬようにひそひそと会話を続けていた。


「逃げるのは難しそうだ」


「ああ、ここで始末していこう」


「子供と油断するなよ。さっきの魔法は中々のモノだった」


「分かっている」


 不意打ちのように異界へと逃げて来た自分達を即座に追ってきた春達。さきほど仕掛けて来た魔法からも逃げるのは難しそうだと判断する。


「それでどうする?」


「数はこちらが不利だ。そこを突くため、向こうは五人での連携を計るはずだ」


「その方がこちらとしては有り難い」


 春達の作戦に予測を立てる三人。数の不利を突くための連携だと判断すると、好都合だと一人が不気味に笑う。

 そんなとき、春と耀がローブの三人組に向かって勢いよく駆け出した。


「「「―――!」」」


 突如として動き出した二人に驚くローブの三人組。迎撃のために意識が二人へと集中したそのとき、太鼓の音が三回鳴り響く。太鼓の音を聞いた三人組は急いでその場から跳び退くと、三人が立っていた虚空が爆発する。

 太鼓の音は三人組が跳び退いた後も続き、ドンドンドンとリズムを刻む。そして、それに続くように起こる爆発を三人組は避け続けていった。


(これは………)


(明らかに分断されてるな)


 爆発を避けるたび、他の二人と距離が離されていることを悟るローブの三人組。あからさまではあるが爆発を無視することはできず、そのまま距離を離されていく。


(まあいい。この爆破もそう長くは続かないだろう………ん?)


 剣士のローブの男が思考している最中、爆発の奥から迫り来る春と耀の姿を捉える。そして、それぞれが拳と剣を構えるのを確認した。

 二人が近づくと爆発が止む。そして、迫り来る白く輝く剣と黒い霧を纏った拳を己が剣で受け止めようと構える。


(この程度なら―――)


 大した威力は無い、と剣士は高を括る。その目論見通り、耀が振り下ろした剣は受け止められた。少し遅れて、春の拳が耀の剣を受け止める剣士の剣に当たる。

 これも受け止めて終わり。そう思っていた剣士は次の瞬間、その余裕な態度を崩されることとなった。


「なっ!? 剣が折れ、がはっ!!」


(大当たり!)


 予想に反し、春の拳を受けた剣はポッキリと容易く折れてしまった。予想外の事態に剣士のローブの男は対応が遅れ、迫る春の拳をモロに胸で受けてしまう。その威力に口から大きく息を吐き出し、突き飛ばされた。

 春は自身の闇魔法で容易く相手の剣を折れたことで、その剣が魔法で作られたものだと確信した。


 剣士のローブの男が殴り飛ばされたのを遠巻きに見ていた他の二人は援護に向かおうとする。しかし、魔獣使いのローブの男は迫り来る炎の弾丸を避けるために足を止める。顔を逸らし、ギリギリで弾丸を躱した。


「あなたの相手は」


「俺達だぜ」


「ちぃっ!」


 挑発するかのような笑みを浮かべて立ちはだかる篝と十六夜に、魔獣使いは不快そうに舌打ちをする。一方、篝の魔法を弾いたローブの男は再び起こった太鼓の音と爆発に足を止めた。


「あんたの相手は俺だ」


「クソッ。厄介だな………」


 こちらもまた、挑発的な笑みを浮かべてローブの男に立ちはだかる龍信。太鼓魔法の使い手が立ち塞がったことにローブの男は苛立ちを募らせるのだった。





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