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13-4 取引現場を押さえろ(後編)


「なあ、まだかよー」


「うるせぇなー。もう少しだから待ってろよ」


 人気がない空き地。周囲に建物はあるがどれも空き家であり、塗装がはげていたり、雑草や蔦が伸び放題になっていた。空き地もまた、建物が無いだけで似たような状況であった。

 そんな空き地の前で立っている四人の高校生。その四人を取り囲む様に春達は建物や塀の影に潜む。組み合わせは春と耀、十六夜と篝、奏多と龍信、警察官二人の四組。気配を消し、ジッと高校生達を見張っていた。


(いかにもな不良だなー)


 塀に隠れ、そこから高校生達を覗き見る春はそんな感想を心中に抱く。喋り方や佇まい、数々の派手なアクセサリーなど、絵に描いたような不良の見た目をしていた。

 そんな高校生達が違法な装置に手を出そうとしているのだから、怒りを通り越して半ば呆れたような冷えた目で高校生達を見る。春と共に高校生を覗き込む耀も、顔を僅かに顰めて冷ややかな目を向けていた。


 そんなとき、高校生達と物陰に潜んでいる春達に緊張が走る。空気が淀み、常人では感知できない微弱な魔力の変化が生じる。それを全員が感じ取っていた。


((((((来た………!))))))


 春達が身構えると同時に、高校生達のすぐ近くで小さな異界(ボイド)への穴が開く。高校生達は先程までの騒がしさが嘘のように消え、真剣な顔つきで異界への穴と向き合っていた。

 穴は徐々にその大きさを変え、やがて人が一人通れるサイズへと変わる。穴の向こうには荒廃した異界の景色が広がる。そしてそこにはローブを纏い、フードを深くかぶっているせいで顔が見えない人物が立っていた。


「っ………!」


 ローブのの人物を見て、高校生の一人が緊張のあまり喉を鳴らして生唾を吞む。それと同時に、穴からローブを纏った人物が抜け出て来る。それだけでは終わらず、後二人。同じ格好の人物が続くように穴から現れ、先頭の人物の左右後方に並び立った。

 そして、一歩一歩。ゆっくりと高校生達に近づいて行く。コンクリートの地面が靴底を削る小さな足音が鮮明に響き渡る。


 その音に合わせ、春達の緊張のボルテージも上がっていく。先程よりも注意深く、且つ慎重にローブの集団と高校生達の動向に目を光らせた。


「………例の装置は?」


「心配するな。ここにある」


 一人の高校生の問いかけに答えるのは、先頭に立つローブの人物。聞こえて来た声はかなり低く、四十代後半や五十代の男性を想起させる。

 男はローブの懐に右手を入れ、すぐに手を抜き出す。するとその手には、この間の強盗犯達が身に着けていた増幅(ブースト)装置と全く同じ物が握られていた。


『―――っ!』


 高校生達は歓喜や好奇心に笑みを浮かべる。反対に春、耀、篝、奏多、警官達は目つきを鋭い物へと変え、非難するように装置とそれを取り囲む人物たちを見つめた。


 そのせいなのだろう。

 現物を目の当たりにしたことにより、様々な感情が胸中に渦巻いてしまった。その結果、ほんの僅かだが相手に違和感を与えてしまったのは。


「………っ! おい」


「っ、なるほどな………」


 右後方に居たローブの男が先頭の男に声を掛ける。たった一言にも関わらず、その声は怒りや焦燥感が込められているのが分かる。

 その声を聞いた先頭のローブの男は取り出した装置を即座に懐に仕舞い込んでしまった。


『(気づかれた………!!!)』


 誰のミスかは分からない。己かもしれないし、全員かもしれない。

 ただ分かることは一つ。二言のやり取りと装置を懐に仕舞う動作。この数秒のやり取りだけで、春達は自分達の存在が気取られたと断定した。

 そして、事態は一気に動き出した。





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 それと、ちょっといくつか短編を書きたいので更新が遅れます。

 どうかこの作品と短編を楽しみにお待ち下さい!

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