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13-3 取引現場を押さえろ(前編)


「はー………、未だに信じられない」


「まだ言ってんのかお前」


「だって、互いに一目惚れだぞ。出会ってゼロ日交際だぞ。驚きが凄すぎて、実感がなー」


「「あはは………」」


 春達と合流した龍信、奏多の計六人はショッピングモールを出て街中を歩く。都会とは言えないが、住宅は少なく飲食店や家電量販店などの店が所々に立ち並び、車の往来も多い場所であった。

 並び順は前方に高校生の二人が並び、その後ろを四人が歩く。六人が楽しげに歩くその様子は任務に就いている魔法防衛隊員には見えず、仲良く遊んでいるだけの学生に見えた。


「そういえば、今日は落合さんと布川さんはどうしたんですか?」


「あの二人は今回の件で異界探索の方に回ってる」


「そうですか」


「確か、その人達と九野さんと長嶋さん。入隊時期で言えば私達と同期なんですよね?」


 落合と布川という名前に聞き覚えのある耀は、自身が思う人物と合っているか龍信に尋ねる。耀の問いに龍信は首を縦に振って答えた。


「そうそう。俺達は高校二年生だけど、入隊はみんなと同じで去年なんだよ」


「だから、あんまり気は使わなくていいよ」


「いや、年上なんですから使いますよ」


「ははは! それもそうか」


 春のツッコみに楽しそうに笑う奏多。和気あいあいとしたその様子に、耀は安心したように笑顔を笑顔を浮かべていた。


(春達に聞いてた通り、良い人達だなー)


 春との関係についても嫌味なことは言わず、十六夜の良く言えば飾らない、悪く言えば生意気な態度にも嫌な反応一つ見せない。

 春達の二人への接し方からも、気を許していることが良く分かった。


「ん? 白銀さんどうかした?」


「いいえ! 何も!」


「そう………? ならいいんだけど」


 安心を超え、楽しそうに笑っている耀に奏多は首を傾げる。ただ、春、十六夜、篝の三人は耀が笑っている理由を察し、こちらもまた保護者のようにそれぞれ笑顔を浮かべていた。

 そんな時、龍信のズボンのポケットに入っているスマホが震える。龍信はスマホを取り出すと、スマホを持っている右手の親指で画面をフリックすると耳に当てた。


「はい。もしもし………」


「「「「「………!」」」」」


 声は明るめ。しかし、声の質が真面目に変わったように思えた。

 その様子に電話の内容を察し、他の五人にも僅かに緊張感が走る。会話が止まり、電話をする龍信に視線が釘付けになっていた。


「はい………分かりました。すぐに向かいます」


 そう言うと龍信は通話を切り、スマホをポケットに仕舞う。そして、くるりと後ろへ振り返ると笑顔と共にこう告げた。


「行くぞ皆。ターゲットに動きがあったらしい」







 六人が向かった先は、先程の店が立ち並ぶ街を抜けた住宅街であった。すれ違う人はおらず、(ひと)()はほとんどない。

 そんな中、六人の歩く先に一人の男性の姿が見える。この住宅街の中を歩くわけでも無く、立っている姿は異質に映った。

 そんな状況で龍信はスマホを操作し、誰かに電話をかける。すると、男性がスマホを取り出して電話に出る素振りを見せる。それを見て、あの男性が警察官だと五人は確信した。


「こんにちは」


 そう言いつつ龍信は男性に近づくとスマホの通話画面を見せる。それにより、男性も六人が自身が待っていた防衛隊員だと確信した。

 通話を切り、スマホをポケットに仕舞うと男性も龍信に話しかけた。


「待っていました」


「状況はどうなってますか?」


「ここから少し先にある路地裏に入って行きました。そこを抜けると空き地があって、そこで装置を受け取るようです」


「分かりました」


 そこまで聞くと龍信は振り返り、春達五人へ目を向ける。龍信を含め、皆表情は真剣なものへと変わっていた。


「手筈通り、二人ずつに分かれて隠れる。それで異界から装置を持った人物が現れる、もしくは取引を確認次第取り押えに行く。まずは俺が出ていくから、みんなはそれに続いてくれ。何か意見は?」


 龍信はそう問いかけると、五人の顔を見渡す。春、耀の二人は僅かに首を横に振ることで意見が無いことを示す。残りの三人は沈黙でそれを示した。

 その後、奏多は一人龍信の肩に手を置き、快活な笑顔を浮かべて話しかけた。


「頼りにしてるぞ。Cランク(・・・・)


「まだ成って一週間も経ってないけどな………。まあ、頑張る」


 奏多の期待に少し自身が無さそうに肩を竦め、困ったように笑顔を浮かべる。Cランク成りたての龍信にとって、その期待は少し荷が重いように感じた。





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