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13-2 登場! 奏多と龍信


 春達が任務を言い渡された翌日の朝、四人の姿は大型ショッピングモールのフードコートにあった。


「任務なのに私服かー。なんか変な感じだ」


「まあ、隊服でその辺りうろついてたら警戒されるからな」


「私も少し気が抜けそう」


「そこは頑張りましょう。でも、変に張り詰めた空気を出したら怪しまれるから適度にね」


「うん」


「「だな」」


 フードコートで軽くアイスやジュースを食べている四人。服装は隊服では無く私服であり、耀と篝の女子二人はスカートでは無く、動きやすそうなズボンやスニーカーを着用していた。

 しかし、耀だけは剣を持ち歩く必要があるためいつも通り竹刀袋が側に立て掛けてあった。


 今回の任務は見張りをしている警察から連絡があるまで付近で待機することになっており、一般人に紛れ込む必要がある。周囲の騒がしさや距離的に会話を聞かれることは無いだろうが、人目はある。

 雰囲気や態度で怪しまれないよう、気を払っていた。


「それで、長嶋さんと九野さんは?」


「もうすぐ着く、ってさっき連絡があったけど」


 篝が問いかけると春はジュースの入った紙コップをテーブルに置き、追加で何か来てないかとスマホの画面を覗き込む。それと同時に、四人に近づく人影が二つあった。


「おはよう」


「よっす!」


「あ、おはようございます」


「「おはようございます」」

「おはよう」


 現れた二人に挨拶を返す春達。ただし、十六夜だけは案の定と言うべきか軽いノリで挨拶を返す。

 しかし、二人は慣れているのか十六夜の態度に気にした様子も無く言葉を続けた。


「ごめん。待たせたか?」


「いえ、全然。それにまだ集合時間前ですので」


「そっか」


 黒縁の四角い眼鏡を掛けた青少年は気遣う春に小さく笑顔を浮かべる。もう一人の切れ長の目をした青少年は、見たことが無い少女の存在に目が行った。


「もしかして君が噂の白銀さん?」


「初めまして、白銀耀と言います。今日はよろしくお願いします」


「ああ、初めまして。俺は九野(りゅう)(しん)。よろしく。で、こっちが」


「俺は長嶋(かな)()と言います。よろしくお願いします」


 明るく、気さくに笑顔を浮かべて自己紹介をする龍信。対して、奏多はぺこりと頭を下げて丁寧に自己紹介をする。

 それを見た龍信は隣に立つ奏多にツッコみを入れた。


「いや堅すぎるだろ」


「だって、年下とはいえ初対面だし仕事だし」


「真面目か」


「あ、そんなに気を使わなくて大丈夫ですよ。春達と同じでタメ口で大丈夫です」


「………なら、お言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」


「はい! ぜひ!」


 流石と言うべきか、耀の持ち前の明るさと圧倒的コミュニケーション能力に奏多は敬語をやめる。敬語ではなくなったことに耀も笑顔を浮かべた。


「ちなみに、噂って何ですか?」


「黒鬼と一緒にSランク喰魔(イーター)を撃退して、更に二人は付き合ってるって話なんだが………。前半はともかく、付き合ってる方はやっぱりガセだったか?」


「いえ、間違ってないです。特に後半の方は間違いなく! 純然たる事実ですっ!!」


「お、おお。そうか………」


「ええ!? マジかっ!? 絶対噂に尾ひれがついただけだと思ってたのに! じゃあアレか!? 互いに一目惚れで即交際というのも………!!?」


「事実ですっ!」


「どんなラノベだよっ!」


 龍信の話す噂を強く肯定する耀。その勢いに龍信は思わず戸惑いながら一歩後ずさってしまう。そして、奏多もまた信じられないといった様子で目を大きく見開いて驚いていた。


「もはや見慣れた光景ね」


「だな。ほら彼氏。興奮気味の彼女を止めて来てやれ」


「こ、こいつら………!」


 さながら貴婦人の茶会を幻視させる落ち着きで、目の前の寸劇を眺めながらアイスを食す篝とジュースを飲む十六夜。

 高みの見物だと言わんばかりの二人の態度と十六夜の発言に、春はこめかみに小さな青筋を立てた。





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