9-1 春の師匠・桜木士登場!
読者の皆様! お待たせしました!
今回より新章スタートです!
ですが、区切りの関係で短めです。
この間のAランク喰魔討伐任務から五日目。春も前日に無事退院し、事件には一区切りがついた―――と思われたが。
「また支部長室か」
「最近よく呼び出されるわよね。私達」
春、耀、十六夜、篝のいつもの四人の姿は魔法防衛隊星導市支部の廊下にあった。
春がなんとなく呟いた言葉に、篝が何とも言えない微笑みを浮かべながら同調する。その表情から今回の呼び出しの理由も良いものではないことが分かる。
「まあ、仕方ないだろ」
「あんなことがあれば………ね」
十六夜と耀も同調し、呼び出しの理由に納得する。しかし、誰一人としてその理由を口にはしない。
それにより、春は病院での支部長との会話を思い出していた。
※
「春君」
「はい、何ですか支部長?」
春がひとしきり泣いて目と目元を赤く腫らしていたとき、星導市支部の支部長である幸夫は真剣な表情で声を掛ける。その表情に春は少し身構え、聞く姿勢を整える。
幸夫はそれを確認すると目をチラリと扉に向けたりなどして周囲を警戒し、慎重な面持ちで春へと話しかけた。
「愛笑から聞いたが、白銀君と立花君がSランク喰魔と会話したときの内容を覚えているかい?」
「はい。覚えてま―――」
「それは誰にも話していないね?」
「は、はい」
覚えてます、と春が言い切る前に幸夫は次の質問を投げかける。
その強い口調に春は少し驚き、返答に声を詰まらせてしまう。一体なんなんだと戸惑うも、幸夫はそんな春の戸惑いをよそに言葉を続ける。
「いいかい。その会話の事とその内容について、絶対に誰にも話してはいけないよ」
「どうし、て………。―――!」
話してはいけない理由を聞き返そうとしたそのとき、春は自分自身でその答えに辿り着き、目を見開いて硬直した。
『くくっ、そうか。闇魔法と光魔法の使い手は魔法防衛隊に居るのか』
『にしても、そうか。だとしたら、二人は殺すわけには行かないな』
『………別に、お前ら二人については何も知らない。知っているのは光魔法と闇魔法についてだけだ。だが、それをお前らに教えてやるわけにも行かない』
春の脳裏に思い起こされるSランク喰魔の拳磨との会話と彼奴が発した言葉の数々。その重大性が今になって春に伸し掛かった。
「………分かったようだね」
「………はい」
幸夫の問いに、春は深く頷いて答えることでその理解度を示す。その重苦しい声音と頷きから十分に理解してくれたと幸夫は判断した。
「近いうちにこのことで再び話を聞くことになる。それまではこの事は口にしないよう頼みたい」
「分かりました」
「うむ。念を押すようで悪いが、愛笑も白銀君も気を付けてくれ」
「「はい」」
幸夫は春だけでなく、その場に居た耀と愛笑にも再度口外しないように言う。これが、病室での幸夫との最後の会話であった。
※
病室での会話を思い出し、春は視線を下げて表情を強張らせる。それは他の三人も同様であり、何とも言えない緊張感が四人から放たれる。
そのまま軽快とは言えない足取りで廊下を歩いていると、四人は支部長室の扉の前まで辿り着く。
一番前に居た春が代表し、入室の許可を得ようと扉を三回軽くノックする。そこでようやく、四人は室内の魔力の異変に気付く。
「「「「ん?」」」」
「どうぞ。入りたまえ」
四人が一斉に眉を顰める。それと同時に、室内から幸夫の入室許可の声が四人の元へと届く。許可を得ると春は扉を開き、入るよりもまず先に室内へと目を向ける。
支部長のデスクに座る幸夫。その前の小さなテーブルとそれを挟んで向かい合うソファの片側に座っている愛笑。そして、反対側のソファに座っている男に春は目を大きくさせた。
「つ、士さん!?」
「やっ、春。久しぶり」
右手を上げ、ニカッと快活な笑顔を向ける男。この男こそ、春の師匠にして日本に二人しか居ないSランク隊員の一人。
桜木士、其の人であった。
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