84 ティルダ王女の恋煩い おまけ付き
お話の都合上、短めの回となります。
そのため、短いですが最後におまけを付けました。
ベアトリスは禁書庫から出てティルダたちを探すと、図書館の机が並ぶエリアでその姿を見つけた。ケイティの隣に座り込み、シュンと肩を落とすティルダの姿は、いつもの彼女からは想像できなかった。
ど、どうしましょう! わたくしのせいですわよね……!?
ベアトリスは自分がティルダの前に現れて良いか一瞬躊躇った。だが、勇気を出して声をかける。
「ティルダ様」
ハッと気付いた彼女が顔を上げて、目が合う。ケイティとトレヴァーもベアトリスを見た。
「ベアトリス様……」
「申し訳ありません。わたくしが禁書庫を訪れたことで、ティルダ様の邪魔をしてしまいましたよね……。本当にごめんなさい」
ベアトリスが謝罪を口にすると、ティルダが立ち上がった。その様子にベアトリスはビクッと肩を跳ねさせる。
やはり、怒っていらっしゃるわよね……
だが、ティルダはベアトリスの想像とは違った反応を見せた。
「ベアトリス様ぁ!」
駆け寄ってきたティルダがベアトリスに抱き付く。
「わたくしっ、頑張りましたのっ! でも、いつまで経ってもフランク様から妹のようにしか見られないのですっ!」
「ティルダ様……」
ティルダの目元から涙が零れ落ちる。禁書庫に入れず、状況が分からないティルダ付きの侍女はどうすることも出来ず狼狽えていた。
「フランク様がティルダ王女殿下を見つめる目と、ベアトリス様を目にした時の違いを目の当たりにされたようなのです」
それまでティルダを慰めていたケイティがベアトリスに補足する。
「それで妹のように見られていると思われたのですね」
確かに、ティルダはアルバートの妹でフランクはアルバートの親友だ。そのため、フランクがティルダを妹のように扱ってもおかしくはないと、ベアトリスは考えた。
だが、ティルダが目にしたのはベアトリスという想い人を目の前にしたフランクの顔だ。
バランスを崩して、梯子から落ちそうになったティルダが怪我をしないよう、フランクは抱き留めて、その後も落ちてきた本からティルダを庇った。『大丈夫かい?』とフランクに声をかけられて、近すぎる距離と落ちるかもしれなかった恐怖の両方でティルダはドキドキしていた。そして、見てしまった。
現れたベアトリスを見るフランクの顔を。
瞬間、ティルダはフランクが今もまだベアトリスを好きだという事実を、嫌というほど叩きつけられた。だが、ベアトリスはそれを知らない。
「王女殿下でもままならない恋があるのですね……」
席から立ち上がったトレヴァーは「失礼致します」とティルダに声をかけて、彼女の目元から溢れた涙をハンカチで拭う。
暫くの間、三人はティルダを慰めた。
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【おまけ】
意外と鋭い観察力のエルバートへ
ベアトリスからティルダに関する一問一答
Q.「エルバート様はいつからティルダ様がフランク様をお慕いしていると、お気付きでしたか?」
A.「物心が付いてすぐだと思います」
Q.「なるほど。幼い頃から、ということですね?」
A.「両親が互いに送る視線とアルバート兄様がベアトリス様に向ける視線。それらと一緒だったのですぐに分かりました」
「……」
アルバートに想いを寄せられていると分かるエルバートの答えに、ベアトリスは頬が熱くなった。
にこにこ嬉しそうなエルバートの笑顔が眩しい。年下のエルバートにからかわれている気がして、ベアトリスはそれ以上、質問を続けられなかった。




