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婚約解消寸前まで冷えきっていた王太子殿下の様子がおかしいです!  作者: 大月 津美姫
5章

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79 カモイズ伯爵夫妻の頼み

 アルバートは国王と話をした後も、相変わらずフランクに禁書を探してもらっていた。王立図書館の方は司書の助けもあって、関連資料や文献に大方目を通し終えたらしい。今は王城図書館でアルバートがまだ目を通していない禁書を当たってもらっている。

 だが、これといって情報を見付けられないまま、時が過ぎて行く。


 あれから、アルバートはリリアンの尋問担当騎士に“ゲーム”について聞き出すよう頼んでいた。その結果、少しずつではあるが、リリアンは騎士の質問に答えているようで、ゲームに関する証言がポツポツと報告書で上がってくる。

 それによると、リリアンが言うゲームとやらは、攻略対象者と呼ばれる登場人物との恋愛を楽しむ娯楽品らしい。


 攻略対象者は私の他にフランク、トレヴァー、マキシミリアンの生徒会メンバーに加えて、エルバートも含まれていたという。

 そこから推察するに、リリアンはアルバートを攻略対象として選んだとアルバートは考えていた。だが、他の生徒会メンバーやエルバートが選ばれていた場合でも、物語の大きなイベントとして、アルバートとベアトリスの婚約解消は必須だという。


 ゲームの中のベアトリスは、リリアンに嫌がらせを行う悪女の立ち位置だったそうだ。

 ゲームではリリアンが誰を攻略対象に選ぼうと、ベアトリスには悪女として非難を浴びる展開が待っているらしい。


 アルバートが見てきた未来とは、違う結末が訪れる可能性も存在すると分かったが、何故かどの未来でもベアトリスは悪女として扱われるようだ。


 何故ベアトリスなんだ?

 何故、彼女が悪女として扱われる? 

 ベアトリス(幸せをもたらす者)という名を持つ彼女は寧ろ周囲を幸せにする人の筈だ。


 今の状況がゲーム内の出来事として存在するのか、それともゲームの内容はもう終了しているのか、はたまたゲームの内容からは逸れた未来を歩んでいるのか、アルバートには何一つ分からない。

 つまり、ベアトリスを危険から守るためには、まだまだ気が抜けないということだった。


 リリアンの一件は、尋問に時間が掛かってしまったこともあり、長引いてしまっている。ベアトリスを守るためにも、リリアンの件を早く解決しなければならないとアルバートは考えていた。


 アルバートの執務室にノックの音が響く。入室を許可すると、使用人がカモイズ伯爵夫妻の到着を知らせてくれた。


 アルバートはリリアンのことを伝えるため、カモイズ伯爵夫妻を王城へ招いていたのだ。

 知らせを受けてアルバートは応接室へ向かう。ソファーで待っていた伯爵夫妻に形式的な挨拶を済ませると、早速本題に入ろうとした。だがその前に、国民には一部公表しない内容も話に含まれているため、ここでの会話を他言しないよう、それぞれ誓約書にサインを貰った。


 それからはアルバートの話が進むにつれて、伯爵夫人が顔を青くした。伯爵も困惑の表情を浮かべて、アルバートの話を聞いていた。


「以上が、尋問で明らかになった事実です」


 アルバートがそう纏める頃には、カモイズ伯爵夫妻は視線を落として口を閉ざしていた。


「……お二人はリリアン嬢をとても大切に思われている。故に、未だ彼女を除籍されていないのだと判断しました。話を聞いて気が変わったのであれば、早急に彼女を除籍するための手続きに移って頂きたい」


 アルバートが言い終えると、部屋の中はシーンと静まり返った。そんな中、カモイズ伯爵夫人が小さく呟く。


「……信じられません。わたくしは、……信じたくありません」


 伯爵が夫人の名前を呟いて、その肩を引き寄せる。


「あの子は……私たち夫婦が長年望んで、漸く授かった子なのです」

「はい。父からそのように聞きました」

「何にも変えがたい、宝物なんだ……」


 呟いた伯爵の表情が悲しみを纏って歪み、じわりとその目尻に涙が滲む。


「……」

「その子が、もうずっと前から別人と入れ替わっていただなんて……」


 夫人が今にも泣き出しそうなほど目を赤くした。


「…………いや、思えば気付くきっかけは何度かあった。だが、私たちは娘とどう接して良いか分からず、忙しさを理由に目を逸らしたんだ」


 伯爵が俯いていた顔を上げる。


「今回のことは私たちにも責任がある。だが、それを理由に領民に不安な思いをさせる訳にはいかない」


 そうして夫妻は顔を見合せた。夫人が涙を浮かべて頷くと、伯爵はアルバートに向き直る。


「アルバート王太子殿下、私たちは娘のリリアンをカモイズ伯爵家から除籍します」


 カモイズ伯爵の言葉に、アルバートは一つの家が取り潰しにならずに済むことにホッとした。


「そうか。では除籍の手続きを──」

「その前に、一つお願いがあります」


 伯爵の真剣な表情に、アルバートも緩めていた表情を戻して応対する。


「何だ?」

「娘に、リリアンに会わせていただきたい」

「え? いや、それは……」


 まさかそんなお願いをされるとは思っておらず、アルバートは言葉に詰まった。すると、カモイズ伯爵が「この通りです」と懇願し、夫妻揃って頭を下げる。


「これは妻と相談して決めていました。刑罰がどんな結果になろうと受け入れようと。そして、機会を頂けるのであれば、今までのことを娘に謝ろうと」


「カモイズ伯爵、夫人、とりあえず顔を上げて話をしましょう」

「いいえ。許可していただけるまで、このまま待つつもりです」


 頑ななカモイズ伯爵夫妻はそのまま微動だにしない。

 アルバートが許可するまで二人は動くつもりがないと分かり、アルバートは少し悩んだ末に二人の願いを聞き入れることにした。

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