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私と魔王  作者: ふるか162号
1章 私と魔王
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1-6


 今日も朝早くに目覚め、自分でお弁当を作って、学校に向かう。


 しかし、昨日は色々あったな……。


 別世界から来た、次期魔王のシェリルさん。

 あの人とは、あの後も話をしていて思ったけど、凄く優しいし、人を疑うことをあまりしないといった印象を受けた。

 シェリルさんの世界では、人を騙すような人間はいなかったんだろうか……。国のトップになりえるような人間なら、優しいだけじゃダメな気がするね。

 でも、決して悪い人じゃないし、どうにかして無事に元の世界に戻してあげたい。そうは思っているけど、澪姉ちゃんの居場所がわからない以上、どうしようもない……。

 昨日の夜に、なにか手掛かりがないかと家の中をいろいろ探してみたけど、何も見つからなかった。というより、前に連絡来たのって、いつだったっけかな?


「しかし、なんで澪姉ちゃんは、召喚魔法の手順なんかを知っていたんだろう?」


 覚えている限りの澪姉ちゃんは、不思議な実験をしたり、何もないところをジッと見つめたりと……、よくよく考えたら、不思議な行動をよく取っていたな……。しかも、不思議なこともよく言っていたし。


『この世界以外の世界があるとしたら、素敵だと思わない?』


 それが、澪姉ちゃんの口癖だった。

 もしかしたら、あの頃から、別世界を知っていて、召喚魔法を使えたのかもしれない。私と同じ、魔力を使える人間として……。

 昨日はシェリルさんには言わなかったが、私も魔力を扱える人間の一人だ。ただし、私の場合は魔法を使えるわけじゃなく、身体能力を向上させるために魔力を使うこともある。

 普通に生活するうえでは何も役に立たないけど、この地区の不良やヤクザには、喧嘩で負けたことがない。まぁ、ぶっちゃけた話、魔力がなくても、負けることはないんだけどね。……と、色々考えながら自分の席に着く。


「鬼子母神さん、お、おはよう」

「おはよう。田中さん」


 隣の席の田中里美ちゃん。このクラスで私に話しかけてくれる、数少ない生徒の一人だ。ただ、私が怖いのか、いつもビクビクはしている。

 なんか、小動物みたいでかわいいんだよね。そんなことを考えていると、田中さんが私をじっと見ていた。


「きょ、今日はいいことがあったの?」

「え? どうして?」


 突然そんなことを言われて、少し困惑してしまう。


「特に何もなかったけど……」


 確かに昨日は色々あったけど、どっちかといえば迷惑なことだったんだけどなぁ……。あ、爺さんだけね。

 しかし、別にいつもの私と変わらないと思うんだけど……。


「いや、いつもは無表情なのに、今日は微妙に笑っているよ」


 微妙に笑ってる? あぁ、久しぶりに、姉ちゃんのことを思い出したから、無意識に楽しいとか思っちゃったのかな? いや、それはないな……。じゃあ、シェリルさんが来たからかな? そっちの方があり得る。

 そういえば、どうしてシェリルさんは日本語を使っているんだろう? しかも文字は、ローマ字。

 まず、日本語が使われている理由をいくつか考えてみた。いや、これに関しては、ほぼ答えは出ていると思う。


「シェリルさんと同じで、過去に日本人が異世界に召喚されて、国を興した。とかが、一番最有力かな」


 次に文字。これが一番わからない。

 漢字が複雑ならば、ひらがなやカタカナでもよかったはずだ。なんでローマ字?

 もしかしたら、シェリルさんの世界に召喚された人が、小学生。いや、中学生くらいの子で、英語が得意じゃなかった……とかか?


「え? 今、何か言った?」

「いや、独り言だよ。気にしないで」


 あぁ、口に出ちゃってたか……。

 しかし、姉ちゃんが召喚の本を書いてたり、魔力が使えない爺さんでも召喚が成功したこと、シェリルさんがこっちの世界に来てしまったこと……。まだまだ分からないことが多すぎる。


「あ、そうだ。鬼子母神さん、今日は転校生が編入されてくるらしいよ」

「そうなんだ。男の人? 女の人?」

「私は女の子って聞いているよ。どうやら、外国の子って可能性もあるね」

「外国の?」


 このタイミングで外国の転校生? しかも女の子。

 思い当たるのが一人いるんだけど、まさか、昨日の今日だよ? いや、それはない。と思うんだけど……。

 そんなことを思っていると、教室のドアが開く。そして、先生と……、赤い綺麗な髪の毛の女の子が教室に入ってくる。

 あぁ、やっぱり……。


「シェリル……、田所シェリルです。皆さん、よろしくお願いします」


 シェリルさんがそう言って頭を下げると、教室にいるみんなは、湧き上がっていた。


「ま、マジか……」

「席は……。鬼子母神さんの隣が空いているな。そこに座ってほしい。日本語は通じるか?」

「はい」


 シェリルさんは、そう言って私の隣の席に着く。


「しばらくの間、よろしくお願いしますね。らなさん」

「うん。よろしくね。シェリルさん」


 私たちは笑顔で挨拶をしあう。

 しかし、あの爺さん。大会社の社長だったとは聞いていたけど、戸籍も何もないシェリルさんを、どうやって学校に入れたんだ……?


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