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私と魔王  作者: ふるか162号
1章 私と魔王
3/8

1-3


「ま、魔王?」

「はい。でも、今はお父様が魔王を務めていらっしゃるので、私は次期魔王といったところでしょうか。あ、この世界には、別世界の魔王として召喚されましたよ」


 シェリルさんは、丁寧にそう教えてくれた。

 ふむ……。シェリルさんの言い分には納得はしたが、もう少し詳しく話を聞きたい。それに、もしかしたら、田所の爺さんに脅されていて、こんなことを言わされているのかもしれないし。


「とりあえず、もう少し話を聞かせてほしいな。爺さんの部屋は、めちゃくちゃんなんでしょう? 私の部屋に上がって」


 私は自分の部屋にシェリルさんを招く。しかし、元凶と思われる爺さんは、自分の部屋に帰ろうとしたが……逃がさなーい。

 私は爺さんの手首をつかむ。


「む? らなちゃんは、脳筋で、力加減を知らないアホの子じゃから、そんな力でつかむと、ワシの腕の骨が砕けてしまうではないか」

「あ、ごっめーん。うっかり骨を砕いちゃったら、大変だねー。てへっ」


 私はわざとらしく、舌を出す。あ、一応言っておくけど、爺さんは元社長さんだから、慰謝料とか治療費とか言ってきそうだし、面倒臭さそうだから、骨は砕いていないからね。あ、補足しておくと、簡単に砕けるけどね。

 まぁ、私と爺さんはいつもこんな感じだし、じゃれているだけと思って欲しかったけど、シェリルさんの顔が青ざめている。

 そして、爺さんの腕に優しく手を添える。


「お、お爺さん、腕は大丈夫なんですか!?」


 シェリルさんがそう言うと、爺さんの腕が青白く光る。


「腕があったかいのー」

「治療しているので、少し待ってください。それと、らなさん!」

「は、はい?」


 シェリルさんは、腕を治療? しながら、私を睨む。というより、怒った顔をしている。


「お年寄りは大事にしなければいけません! お年寄りというのは、骨が脆くなると、私の四天王さんが言っていましたので、労わらなくてはいけないのですよ!」


 なるほど。

 言っていることは、魔王っぽくないけど、次期魔王を名乗るだけあって、四天王という、シェリルさん直属の部下がいるってところか。

 あ、そんなことより、ちゃんと誤解は解いておかないと。


「シェリルさん、これは爺さんの冗談だから、怪我とかしてないよ」

「え? 冗談?」

「そうじゃ。実際は折れておらんよ」


 私と爺さんがそう答えると、さっきまで怒っていたシェリルさんは、一瞬だけきょとんとした顔になるが、すぐに眉を吊り上げて怒る。


「冗談でもそんな冗談はいけないと思います!!」


 シェリルさんはそう言って、爺さんに詰め寄っている。爺さん、困ってるみたいだな。ざまぁ……。


 家に入ってから二人を座らせて、お茶を用意する。シェリルさんは、私の部屋が気になるのか、キョロキョロしている。


「お爺さん、さっきらなさんが持っていた板よりも大きな板が置いてありますが、アレは何ですか?」

「あぁ、アレは人を閉じ込めておく魔道具じゃよ」


 おい、爺。何を嘘を教えてやがる。


「シェリルさん、その爺は嘘ばっかり吐くから、簡単に信じちゃだめだよ」


 そういった後、テレビをつける。本当に観たことがないんであれば、実際にどういったものか観てもらったほうが早いだろう。

 映し出された映像に、シェリルさんはとても驚いているようだ。


「ほ、本当に、人が板の中に入っています!? こ、これは、空間魔法の一種なのですか? いえ、しかし、人が入れる空間魔法は、今は存在していないはずです」

「空間魔法? 違うよ。そもそも、この世界の人間は、普通は魔力が使えないんだ」


 まぁ、普通は使えないだろうね。少なくとも私の通う高校には、魔力を使える人間は片手で数えるくらいしかいない。


「で、では、この板の中の人達は、一体……?」

「あぁ、これは、別の場所で撮影……、いや、記録したモノを電波というのを使って、映像として流しているんだよ」


 私自身、テレビには詳しくないんだけど、テレビの説明はこれでいいはずだ。


「えいぞう? こちらの世界では、記録したモノが動くんですか!?」


 シェリルさんは、とても驚いているようだ。

 しかし、今の言葉で一つ確信した。それと同時に、シェリルさんがこの世界の人間じゃないということも証明できるかも……。


「シェリルさんの世界では、どうやって記録したモノを見せるの? 今見せられる?」

「え? あ、私の世界の記録が見たいのですね。少しお待ちください」


 そういって、シェリルさんは、空中に何かを書くように指を動かす。すると、シェリルさんに指の前に、うっすらと何かが現れた。

 そこには、真っ白で綺麗なお城と広大な街並みが映し出されている。


「これがお父様が治める国、シンクレア城とその街並みです」


 このお城、こっちの世界にある有名なお城に似てる。けど、アレは森の中にあったはずだし、城下町なんてなかったから、まったくの別物と考えていいだろうね。

 ……というより、浮いているものを見せられては、魔法と認識するしかないようだ。

 これでシェリルさんが本物の別世界の人間ってのがよく分かった。

 じゃあ、もう一個の疑問を解消していこうかな。


「……で? 爺さん、どうしてシェリルさんを呼び出したの? 場合によっては、警察に突き出すよ」


 私は、ちょっと脅しの意味も込めて、笑顔で爺さんを見る。

 普段の私は、無表情なことが多いから、これでも充分な脅しになるはずだ。その証拠に、爺さんも焦り始めている。


「ま、待つのじゃ!?」


 そういって、爺さんは懐から手紙を取り出す。

 爺さんはその手紙を見ろと渡してくるので、私は中身を見る。

 そして、書かれている内容に、驚きを隠せなかった。


 手紙には、『町内会、びっくり人間大賞』の開催の案内が書かれていた……。

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