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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
呪殺師は可愛い男の子が好き

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触れてはならない芙蓉さんの地雷

「それじゃあ、あたしはこれで」


 ネズミ式神は、壁を抜けて出て行った。


 僕は芙蓉さんの方を振り向く。


「今の話、信用できると思いますか?」


 芙蓉さんは、首を縦に振る。


「信用はできると思うわ。ただ」


 ただ?


「ヒョーは、何かを企んでいるわね。今回の襲撃も、失敗なんかではなく、奴にとっては計画通りだったのかもしれない。計画通り順調に進んだからこそ、計画通りに休戦を申し出たのかもしれない」

「計画通り? 僕たちは、ヒョーのてのひらで踊らされているとでも?」


 芙蓉さんが無言でうなずくと、樒がみついてきた。


「何言っているんです。私たちは、奴の式神の大半をやっつけたのよ」

「樒さん。ヒョーは、十ニの式神を操りますが、そのすべてが戦闘用というわけではありません」

「え?」

「十二の式神は、それぞれ役割を持っています。その中で戦闘に特化しているのは、竜式神と虎式神。それ以外の式神も戦えないわけではないのですが、それほど強くはありません」


 だから、ミクちゃんのアクロも虎式神相手に苦戦していたのか。


「つまり、私と優樹が倒した式神は、雑魚ざこという事?」

「そうですね。ヒョーが本来、戦闘には使わないような式神を使って来たのは、陽動の可能性があります」

「陽動?」

「あるいは、こちらの手の内を見るつもりだった」

「じゃあ、私たちはまんまと、手の内を見せてしまったって事?」

「それは分かりません。とにかく、ヒョーが次に攻撃を仕掛けてくるまでは何とも」

「次の攻撃? 明朝六時とか言っているけど、今すぐ攻撃をかけてこないという保証はあるのですか?」

「ヒョーだって人間である以上、式神を使うにはブースターのような薬が必要となります。ブースターを飲んでから、強力な式神を使える時間はせいぜいニ~三十分」


 芙蓉さんは、懐中時計を出した。


「まもなく十一時半。ヒョーが式神を使える時間はもうありません」

「続けてブースターを使えば……」

「ブースターの連続使用は、健康リスクがあります。ミクちゃんのように若い子ならいいですが、私の様なオバさんにはちょっとキツいわね」


 オバさんって……芙蓉さん、まだ二十代でしょ。


「ヒョーの年齢は不明ですが、私より若いという事はないでしょう。そうなると、健康リスクは避けると思われます。もちろん、せっぱ詰まった状況ならリスクを無視して薬を使うかもしれませんが、それはないでしょう」


 なぜ?


「ヒョーは今回、予告状を出してきました。そんな酔狂な事をするぐらいなのだから、かなり余裕があるのでしょう。健康リスクを犯してまで、攻撃してくるとは思えません」

「そう思わせて、攻撃してくる可能性は?」

「ないとは言えませんが、ヒョーがそんな事をするメリットはありません」

「しかし、ヒョーはなぜ六時なんて時間を指定したのでしょう? もっと早くくればいいのに」

「それは、だいたい分かります。ブースターの使用間隔は最低でも一時間は開けておいた方がいいのですが、安全を考えるなら、六時間開けるのが理想的。明朝六時というのは、最適の時間と言えます。それよりも、私たちが寝ずの番などをしたら、いざという時に戦えなくなります。私たちは、権堂さんをいつでも守れる状態で寝ましょう」


 話し合った結果、権堂氏には屋敷の奥の部屋に簡単な結界を張って、その中で寝てもらう事になった。その部屋の右側の部屋に芙蓉さん、左の部屋に樒、その裏側の部屋にミクちゃんが寝ることに。


 そして、僕はと言うと……


「男女差別だよ、これ……」


 権堂氏の部屋の前の広い通路に、シュラフが置かれていた。


 いいんだ。僕なんか……


「優樹。夜這いに来ちゃだめよ」


 誰が樒なんかに夜這いするか!


「ええ!? 優樹君、夜這いするの! えっち!」


 ミクちゃん。そんな事はしないから、そんな変態を見るような目で見ないでくれ!


「大丈夫です。優樹君は、夜這いなんかするような子じゃありません」


 芙蓉さんだけは、僕を信じてくれるのですね。


「だいだい、こんなか細い腕の優樹君に、樒さんを襲えるわけがないでしょ」


 弱くてすみません。


「それもそうですね。じゃあ、優樹。あんたが、夜這いされないように気を付けなさいよ」

「あのなあ、誰が僕に夜這いするというんだよ?」

「芙蓉さん。なんのかんの言っても、芙蓉さんって、槿さんとは姉妹だし……いだだだ」


 アホな事を言った途端、樒は芙蓉さんにヘッドロックをかけられた。


「樒さん。一つだけ言っておきます。私には、絶対に触れてはならない地雷があります」


 地雷? 芙蓉さんみたいな聡明な人にも地雷?


「私は、姉のことを心底嫌っています。その姉と同類視されたら、私だって切れるかもしれませんので、ご注意下さい」


 そこまで、言ってから芙蓉さんは樒を離した。


「き……肝に銘じておきます」


 よっぽど怖かったのか、樒は心底怯えた視線を芙蓉さんに向ける。


「よろしい。私を姉と同類視する事は地雷も地雷。核地雷ですからね。絶対にやらないように」


 か……核地雷……


 いったい、芙蓉さんと槿さんの間に何があったんだ?


 聞きたいけど……聞くのが怖い。

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