呪殺師ヒョー2
その空き教室は、現在のところ超常現象研究会というクラブが部室として使っている。しかも、顧問を勤めていた教師というのが先日急死した国語教師で、今は顧問がいないという。
ならば、好都合。私が顧問を引き受ければ自然な形で空き教室へ入れる。
そんなわけで、私は件の教室に足を踏み入れた。
私が入った時、部室にいたのは女子生徒が五人。
はて? 事実上の部員は三人だけで、後は幽霊部員と聞いていたが、今日は幽霊部員も来ているのか?
いや、それより本物の幽霊はどこだ?
私は霊視もできるので、幽霊がいれば見えるはずだが、教室のどこにもいない。
ガセネタだったのか? それとも、しばらく使っていなかったので、私の超能力が落ちたのか?
部室を見回すと、本棚にはウーなどのオカルト本がぎっしり詰まっていた。
その横の机にはESPカードやヒランヤ、ダンボールで作ったピラミッドなどの、オカルトグッズが並んでいる。
その中に、バラ十字団が使っていたという念力開発器ロジクルシャン・ダイヤレットがあるのを見つけ、私は右掌を向けた。
念力開発器に付いている紙の羽がクルクルと回る。
ふむ。超能力は衰えていないようだ。
では、ここに幽霊がいるというのはガセネタか?
「氷室先生、お待ちしていました」
そう言って私に歩み寄って来たのは、この部活の部長、六星和子。
ちなみに氷室は私の本名。フルネームは氷室氷華。
教員免許は本物なので、偽名を使えない。
「六星さん。部員は三人と聞いていたけど」
「はい、新しい部員が……」
「入っていません!」
唐突に大声を上げて彼女のセリフを遮ったのは、身長百八十はありそうな大柄な女子生徒……はて? どっかで会ったような……
思い出した。
数日前、多摩線で痴漢騒ぎがあった時、私と一緒に痴漢をタコ殴りした女子高生の一人だ。
いや、よく見るとここにいる女子生徒は全員そうではないか。
この中に、背の低い可愛らしい美少女がいるが、確かこの子が痴漢の被害者だったな。
しかし、どうした事だろう?
百合趣味などないはずの私が、この美少女にトキメキを覚えている。
もしかして、私にそういう趣味があったのだろうか?
いかん、いかん。そんな事より仕事だ。
「六星さん。この教室に幽霊が出ると聞いたのですが、それは本当ですか?」
「ええ、本当ですよ」
「私は霊視ができるのだけど、幽霊がどこにも見あたらないわ」
「先生も、霊が見えるのですか?」
「ええ」
「実は霊子ちゃんは……あ! 私たち、部室の幽霊を霊子ちゃんと呼んでいるのですが……」
「霊子ちゃん? 本当の名前は?」
「それをこれから聞き出すのです。私、霊を見ることはできるけど、声は聞こえないので」
「じゃあ、どうやって聞き出すの?」
「実は、先生が部室に入ったちょうどその時に霊子ちゃんは……」
六星和子は背の低い美少女を指さした。
「この子の中に入ったのです」
そうか! この美少女は霊媒師だったのか。今は、彼女に憑依しているから、私にも霊の姿が見えなかったのだな。




