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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
事故物件3

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お札のお裾分け

 一号室に入ってから、僕はすぐに今あった状況をまとめて樒にメールで送った。


 電話の方が楽なのだけど、声を盗聴されるリスクがあるので連絡はメール限定と決めてあったのだ。


 樒から、返事が返ってきたのは食事を終えた時。


『大丈夫だとは思うけど気を付けてね。何かあったら私を呼ぶのよ』


 樒だって疲れているだろうに、寝てていいよ。


 といった返事を返そうとした時、ドアがノックされた。


 誰だろう?


「どちら様ですか?」

「三号室の者です。ちょっとよろしいですか?」


 え? (リーウ)さん? なんで?


 とりあえず、大急ぎで眼鏡をかけ、ベレー帽を被ってからドアを開けると、外で彼女が封筒を持って立っていた。

 

「突然すみません。さっき、この部屋に引っ越して来ましたよね?」

「え? ああ! すみません。挨拶が遅れて」

「いえ、それは良いのですけど……ん?」


 不意に彼女は、怪訝な表情で僕を見つめた。


 ばれたか? 昨日、樒といっしょにいた男だと……


「あの……何か?」

「いえ……昨日会った人と、背格好が似てるなと思って」


 ギク!


「あ! いえ……僕は、今日初めてここに来ましたが……」

「そうですよね。昨日の人は、眼鏡をかけていなかったし……」


 なんとか誤魔化せたかな?


「それは良いとして、聞いていますか? このアパートはオバケが出るって」

「え? まあ聞いていますけど……」


 すると彼女は、封筒を差し出した。


「この中に、お札が二枚入っています」


 昨日、樒が書いたお札か。


「これを部屋の北東と南西に貼ってください。それでオバケは、防げると思います」


 鬼門と裏鬼門だな。しかし……


「あなたの部屋は、大丈夫なのですか?」

「私の部屋にはもう貼ってあります。これは昨日来た霊能者さんに、ご近所さんへのお裾分け用に作ってもらったお札です」


 そんなものまで作っていたのか。


 ん? まさか?


「あの、つかぬ事聞きますが、その霊能者さんは無料でこれを作ってくれたのですか?」


 一応お札を作った時の手間賃は、霊能者協会から支払われる事になっていて、依頼者などから直接受け取ってはならない事になっている。


 しかし、樒は不正請求の前科があるから聞いてみたのだが……


「え? はい。無料でした」


 不正請求はしなかったようだな。


「だけど、私はお代を払うと言ったのですが『そんなの受け取ったら、相棒から怒られる』と言って受け取ってくれなかったのです」


 当然。受け取ったら僕が怒る。


「それでは私はこれで」


 そう言って、彼女は自分の部屋へと戻って行った。


 今の事を樒にメールで送ると、すぐに返信が来た。


『言い忘れた。確かにご近所さんへの、お裾分け用お札も頼まれたので書いておいたわ。言っておくけど、お代は受け取っていないからね』


 知っているって……


『それともう一つ気になることがあるのだけど、冬青さんは幽霊が女子プロレスラーに似ていると言ってたのよね? それも魔入さんのバラエティに出演していたとか』


 そうだけど……


『分かったわ。私、ちょっと魔入さんに確認してみる。優樹の方からは、魔入さんに連絡しなくてもいいよ』

 

 それっきり、メールは来なかった。


 そのまま何事もなく時間が過ぎていき、メールが来たのは零時を過ぎてからの事。


 すでに布団に包まって寝ていたところを、着信音で起こされたのだ。


 手探りでスマホを掴んだ時、僕は気がついた。


 霊の気配がする事に……

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