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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
通りすがりの巫女

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28/289

気絶している間に……

 槿(むくげ)さんがそんな事をしていた?


 (しきみ)の嘘じゃないのか?


 いや……嘘をついているようにも見えない。


「でも、槿さんって、僕には優しかったけど……」

「あの人は、男と女じゃ態度が違うのよ」

「え?」

「男でもいるでしょ。そういう人」

「確かに……」


 可愛い女の子には甘くて、男にはやたら冷たい奴っているな。

 男は平然と殺すのに、女は敵でも殺さない某小説の主人公なんてのもいるな。


「男というより、優樹の場合ショタだから甘やかされたのよ」

「はあ?」

「気がついてなかったのね。槿さんって、ショタコンなのよ」

「そうなの?」


 不意に、樒は幽霊お姉さんの方を向いた。

 祓う気か? と、一瞬思ったがそうではない。


「ちょっと、聞きたいのだけど……」

「なあに?」


 樒が僕を指さした。


「こいつが気を失っている間に、その二人に何か変な事されていなかった?」

「う! それは……」


 お姉さん。なぜ、そこで口ごもって明後日の方を向く? なぜ、樒の耳元で、僕に聞こえないように囁く? 気絶している間に、僕は何かされたのか?


「あの……僕が気絶している間に、何かあったの?」


 幽霊お姉さんは、哀れむような視線を僕に向けた。


「坊や。知らない方が幸せよ」

「そんな思わせぶりな言い方されたら、余計気になるでしょ!」

「私はこの事を墓までもっていくつもり……あ! もう肉体は墓の中かもしれないわね。霊界まで持って行くつもりなの」

「僕は降霊術が使えるんです。霊界まで逃げても、呼び戻しますよ」

「しょうがないわね。着いてきて」


 幽霊お姉さんの後から、僕達は着いていった。


「優樹。本当に知らない方が幸せよ」

「樒までそんな事言うのか」

「分かった。もう止めない」

 

 幽霊お姉さんは、一つの箪笥を指さす。


「開けてみて」


 箪笥の中には、ワンピースとかセーラー服とか、女の子の服がいくつも入っていた。


「お姉さんの、子供の頃の服ですか?」


 幽霊お姉さんは、ゆっくりと首を横にふる。


「いいえ。あいつらが持ってきたの。君を誘拐した後、途中の店で買い集めたらしいわ」


 確かに、衣料品店きたむらの値札が付いたままの服ばかり。どれも買ったばかりのようだが、どの服も一度は誰かが袖を通している。


 誰が?


 しかし、このサイズは、槿さんが着るには小さすぎるし、エラでもちょっと小さいかな?


「あいつら、それを君に着せていたの」

「は?」


 お姉さん……いったい何を言っているの?


「あいつら、君が気絶している間に、君にその服を着せて写真を撮っていたのよ」


 状況を理解するのに、僕は数秒を要した。


「うわわわわわわわわ!」


 理解した時、僕は絶叫していた。


「だから、知らない方が幸せだって言ったのに」 

「樒! 知らなきゃいいって問題じゃないぞ。そんな恥ずかしい写真撮られて、ネットにばらまかれるかもしれないじゃないか!」

「大丈夫。槿さんは自分のコレクションにして楽しむだけだから」

「なんだって槿さんはそんな事を?」

「だから言ったでしょ。槿さんは、ショタコンだって」

「それは分かったけど、これだけ買い揃えるのに、いくら掛かったんだ?」

「値札ついているから、計算してみたら」

「そういう問題じゃなくて……」

「全部で十二万三千二百十六円になります」


 突然、計算結果を言ったのはミクさんのウサギ式神。


「この子、計算得意なのよ」


 そう言ってミクさんはウサギ式神を抱き上げた。


「ああ! でも、カンニングには使っていないからね」


 誰もそんな事聞いていないって……


「十二万って……なんでこんなしょうもない事に、そんな大金つぎ込めるんだ!?」

「そういう人なのよ。槿さんって。趣味のためには金に糸目をつけないの。そのために、霊能者達に不正請求をさせて、その上前をはねていたのよ。何せ、小学生の頃から上前をはねられ続けていた私が言うのだから間違えないわ」


 ううう……槿さんを少しでも良い人だなんて思った僕がバカだった。


「ところで、この服どうします?」


 ミクさんがワンピースをつまみ上げていた。


「ううん……十二万も出して買い揃えた物をただ捨てるのももったいないし……優樹。 あんた、それもう一度着てみない?」

「誰が着るか!」


 結局、この服はミクさんが引き取る事になった


 母さんの車が到着したのは、日が登りかけた頃。


 僕の話を聞いた母さんは、お姉さんを供養するために祭壇を用意してくれた。


「それじゃあ、お姉さん。いろいろとお世話になりました」


 祭壇の上に浮いている幽霊お姉さんに、僕は軽く頭を下げた。


「いいって。おかげで、あたしもようやく、成仏できるんだから。次に生まれる時は、君の娘になりたいな」

「どうして?」

「君なら、優しいお父さんになりそうだし」

「そうですね。まあ、まだまだ先の話ですけど」


 母さんに袖を引っ張られて僕は振り向いた。


「優樹。名残惜しいのは分かるけど、供養を急がないと」

「どうして?」

「はやく槿ちゃんを追いかけないと、ドバイへ逃げられちゃうでしょ」

「そうだった!」


 八時の便で、成田を立つと言っていたな。


「あ! ちょっと待って」


 突然、お姉さんが祭壇から降りてきた。


「あいつらの事だけど、言い忘れた事があった」

>男は平然と殺すのに、女は敵でも殺さない某小説の主人公なんてのもいるな。



海斗「ふうん。そんな奴がいるのか。ひどい男女差別主義者だな」

Pちゃん「ご主人様の事ですよ!」

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