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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
事故物件3

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先生からのプレゼント?

 翌朝、僕はバイクで登校した。


 今夜は僕が泊まり込みで番をするのだが、その前にここでやることがあったので早めに来ていたのだ。


 樒との打ち合わせもそうだが、その前に氷室先生と会う約束をしていた。


 いや別に、先生とデートしようというわけじゃなくて……


「優樹」


 え? 声の方を振り向くと樒がいた。


 こいつ、なんでこんなに早く来ているんだ? それにバイクのエンジン音が聞こえなかったが……


「いやあ、まいったわ。昨日、結界を張るためにお札を書いていたのだけど、今日着ていくワイシャツに墨をこぼしちゃって」

「そうなんだ」

「学校近くのコンビニなら、ワイシャツあるかと思って早めに来たのだけど、早く来すぎちゃったわ」


 なるほど、エンジン音が聞こえないと思ったら、ここにバイクを停めて、コンビニへ行っていたのだな。


「で……優樹は、なんでこんなに早く来たの?」

「なんでって……」


 エンジン音が聞こえてきたのはその時。


 振り向くと、赤いオープンカーが駐車場に入ってくるのが見えた。


「社君」


 運転席から女神が……いや、氷室先生が手を振っている。


 僕の目には女神様に見えるけど……


 僕はオープンカーに駆け寄った。


「先生、おはようございます」

「はい。これ、頼まれていたブツよ」


 いや『ブツ』って言い方はちょっと……


 と思いながら、先生が差し出した赤いリボンで包装された白い小箱を受け取った。


 これじゃあ、プレゼントと誤解されるのだけど……


「先生、ありがとうございます。これはお代です」

 

 小箱を受け取ってから、僕は二万円を入れた封筒を差し出した。


「ああ、お代はいらないわ。これは私からのプレゼントよ」

「え? いえ、そんな、悪いですよ。こんな高い物」

「いいの、いいの。これは私からの気持ちよ。誕生日プレゼントとでも思ってね」

「え? でも……」

「君は通販サイトでそれを買っているけど、私は特別な伝手があって格安で仕入れる事ができるのよ。だから気にする事はないわ」

「はあ、それでは、ありがたく頂きます」

「その代わり」


 不意に先生は、僕の左手を握りしめてきた。


 あ……暖かい! 先生の手……


「優樹、先生から何をもらったの?」


 ギク!


 背後から樒の声がかかると同時に、先生はパッと手を放した。


「あら、神森さんもいたの?」

「いましたよ。優樹とは、仕事の打ち合わせがありますので」

「仕事? ああ、霊能者協会の仕事ね。じゃあ、内容は私に話せないわよね」

「当然です。私達には、守秘義務がありますから」


 樒。そんなツンケンした言い方しなくても……


「それより、先生。優樹に何をプレゼントしたのですか? 教師が一人の生徒にヒイキするのはあまり感心しませんが……」

「これは……あなた達がこれからどんな仕事をするのかは聞かないけど、これはその仕事に必要な物だと思うわ。社君そうでしょ?」

「ええ、先生」


 僕は樒の方を振り向く。


「樒。これは退魔弾だよ」

「退魔弾?」

「この前の仕事で、ほとんどなくなっちゃったから」

「ああ。そういえば、群霊と戦うのにかなり使っていたわね。発注していなかったの?」

「発注はしていたけど、届くのは明日。今日の仕事に間に合わないから、先生に分けてもらうようにお願いしていたんだ」

「ふうん。それは分かったけど……」


 樒は先生の方を向いた。


「なぜ退魔弾を、こんなプレゼントみたいに包装するのですか? これって、普通ビニール袋に入れてあるものでしょ?」

「神森さん、これは偽装です」

「偽装?」

「学校では、エアガンの持ち込みは禁止されています。退魔銃もエアガンですから、その弾を校内で受け渡していたらいろいろと面倒な事になるので」

「それでこんな包装をしたのですか?」

「そうですよ?」

「いや……校内で女性教師が男子生徒にこんな物を渡していては、あらぬ誤解を……」

「ああ、私はもう行かないと。抜打ちテストの準備があるから。二人ともお仕事頑張ってね」


 そのまま先生は、逃げるように校舎の方へ走っていった。


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