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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
事故物件3

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269/289

あきらめて! お願い!

「どうも、お待たせしました。馬鹿な息子がなかなか帰ろうとしなくて」


 そう言って席についた冬青さんの背後を、僕は指差して言った。


「あのう……冬青さん」

「なんでしょう?」

「まだ帰っていませんが……」

「え?」


 僕に言われて、冬青さんは振り返る。


 ほどなくして、三メートルほど離れたテーブルの陰に隠れている息子さんを発見すると、冬青さんは額に青筋を浮かべた。


(たかし)。そこで何をしている?」


 隆と呼ばれた息子さんはお父さんを無視して、隠れていたテーブルから飛び出すなり、僕のほうへと駆け寄ってきた。


 まさか、気付かれたか?


「ねえ君。あの()の名前を教えてよ」


 あの娘というのが、僕だとばれたわけではないようだ。


 ここはすっとぼけて……


「あの娘じゃ分かりません。誰の事ですか?」

「ほら。『六道魔入の怪奇レポート』に出てきた、可愛い霊能者の女の子」


 ごめん。それ僕の女装。


「霊能者の個人情報は教えられません」

「そんな堅い事言わないで教えてよ」

「だめです」

「ん? そういえば君、あの娘と顔が似ているね」


 ギクゥゥゥ!


「ひょっとして兄妹?」

「違います! 赤の他人です!」

  

 横を見ると、樒が笑いをこらえているのが見えた。


 そんな樒の方に、隆はターゲットを変更。


「じゃあ、君でもいいや。教えてよ」

「ええ!? どうしようかな?」


 樒は僕の方へ、チラッと視線を向ける。


「困ったわね。あの娘からは口止め料もらう約束しているし……」


 おい! してないだろう。そんな約束。


「まだもらっていないんだろう?」

「でも、君に教えちゃったら、口止め料もらえなくなるし」

「じゃあ、俺はその倍は出す。いくらだ?」

「いくらだったっけ? ねえ優樹」


 グッ……こいつ、人の弱みに付け込んで……


 僕は無言で財布から千円札を出して、隆の位置からは見えないように樒に見せた。


 樒はあさっての方を向く。


 もっと出せという事か。


 五千円札に変えた。


「んん……どうしようかな?」


 泣く泣く万札を出した。


「思い出した。口止め料は一万円よ。だから、隆君は二万出して……」

「ええ!? 無理だよ、千円にまけて……」


 その途端、今までニヤけていた樒の顔が厳しくなった。


「はあ? ふざけてんの」

「いや、真剣だけど」

「黙っていれば私は一万もらえるのに、それをあきらめて千円で我慢しろって?」

「そこを何とか……」

「ええ加減にせんかい!」


 冬青さんが、鬼のような形相で隆の頭を殴りつけたのはその時。


「殴ったな! 親父にだって、殴られた事ないのに!」

「だから、たった今、私に殴られただろうが!」

「ううむ……そうだった」

「とにかく、仕事の邪魔だ。さっさと帰れ」

「いや、俺は父さんの仕事を継ごうと思っているから、今のうちに覚えておこうと……」

「私の仕事は、姉ちゃんに継がせる! おまえには継がせん!」

「ええ! 姉ちゃんは継がないかもよ」

「仕事を継ぎたかったら、まず家に帰って勉強していろ。家の仕事は、要大卒だ。継ぎたかったら、まず高校を卒業して大学に入れ。話はそれからだ」

「ええ。しょうがないなあ」


 隆は渋々帰りかけるが、ふいに僕のもとに駆け寄る。


「あの娘に伝えておいてくれ。俺はあきらめないぜって」


 いや、あきらめて! お願い!


「いや、お恥ずかしいところをお見せしました。まったく、誰に似たんだか」


 冬青さんは冷や汗を拭いながら、経緯を話し始めた。

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