不動産屋さん
「初めまして」
どこか疲れているような顔をしたおじさんの差し出した名刺には、『宅地建物取引士 冬青 稔』と書いてあった。
どう読むのか聞いてみると、冬青 稔と読むらしい。
宅地建物取引士という事は、不動産屋さんか。
不動産業者って、霊的案件に関わる事が多いから、霊能者にとってはお得意様だけど……
「私の扱っている物件で、幽霊が出て困っておりまして」
それなら、魔入さんなんかを通さないで、直接霊能者協会に問い合わせてくれても良かったのに……
「私はそうするつもりだったのですが、家族にその事を話したら、高校生の息子が『それなら、僕に任せて』と言ってこちらの方に……」
そう言って魔入さんの方に目を向けた。
「霊的相談を持ちかけまして……」
「私はファンサービスのつもりよ。番組の視聴者さんから、霊的相談を受けたら、答えないわけにいかないじゃない。それに私の霊的相談は、霊能者教会と違って無料だし」
「その分、そのネタを心霊番組に使うのでしょ」
「いいじゃない。相談者さんは霊の悩みが解決して、私は番組を作れてウィンウィンなのだから」
「でもさあ、魔入さん」
樒が冷たい視線を向ける。
「霊の悩みが解決できなかったから、私達を呼んだのじゃないの?」
「まあ……そうなのだけど……ん?」
不意に魔入さんが怪訝な表情を浮かべて、窓の方を見た。
「冬青さん。あれ、息子さんじゃないかしら?」
「え?」
冬青さんは振り返る。
その視線の先にある窓の向こうで、一人の男子高校生が店内をじっと見ていた。
「まったく、あの馬鹿は。ちょっと叱って来ます」
冬青さんは席を立ち、店から出て行った。




