嫌な仕事の断り方
『突然で申し訳ないけど、霊的相談を受けて欲しいの。今日は、時間あるかしら?』
そんなメールが芙蓉さんから届いたのは、昼休みの事。
「社君。また霊能者協会の仕事かい?」
隣席から、渡辺君が興味深げに声をかけてくる。
「うん。まあね」
「大変だね。売れっ子は」
「いや、売れっ子じゃないし……」
しかし、どうしよう?
勉強も遅れているし、断ろうかな。
芙蓉さんも、学業優先で良いと言ってくれているし……ん?
もう一通メールが来ている。
げっ! 魔入さんからだ。
『仕事の打ち合わせをしたいの。学校終わったら、学校近くのファストに来てね』
なんつう一方的な……呼び出す前に、こっちの都合を確認するのが先でしょ。
それ以前に僕への依頼は、霊能者協会を通すように言ってあるのに……
しかし、無下に断ったりすると、美少女霊能者の正体が僕の女装だとばらされかねないな。
僕は先に芙蓉さんへ返事をすることにした。
『学校が終わった後ならお会いできます。学校近くのカフェに、十六時半頃に来ていただけますか?』
先に芙蓉さんの依頼を受けてしまえば、魔入さんの仕事を断る口実になる。
芙蓉さんの返事はすぐに来た。
『いいわ。じゃあ十六時半に学校近くのファストで』
ファスト! あそこはまずい。
魔入さんの依頼は断るつもりだが、あのファミレスにはいる可能性があるな。
お昼ご飯のサンドイッチを頬張りながら、僕は返信をスマホに打ち込んだ。
『すみません。ファスト以外の店にしてもらえますか?』
『いいけど、ファストだと何か問題でもあるの?』
『いや、放課後にそこへ行くと、会いたくない人と鉢合わせになるかもしれないので』
『それじゃあ仕方ないわね。レニーズはどうかしら?』
『そこでいいです』
これでよし。後は魔入さんに断りのメールを……いけない! お昼休みが終わるまで五分しかない。
残りのサンドイッチを口に放り込み、僕は返信を打った。
あれ? そう言えば芙蓉さんから仕事の内容を聞いていなかったな。
しかし、今から聞いている時間はないし、まあ芙蓉さんが無茶な仕事を振るとも思えないしいいか。
それより魔入さんへ、断りメールを急がないと。
『魔入さん。申し訳ありませんが、今日は先約があるのでお断りします』
『それじゃあ仕方ないわね』
あれ? ずいぶんあっさりと諦めたな。
いつもだったら『私の仕事がそんなに嫌なの』とかごねるのに……
まあ、いいか。
これで魔入さんの仕事は受けなくて良くなったのだから……と、その時は思ったのだが……




