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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
嫌悪の魔神

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258/289

他言無用

 ん? スマホ画面を改めてみると、文章に続きがあるみたいだが……


 指を画面に当てて、動かして見たら『ハーちゃんより』と書いてあった。


 さらに画面を動かすと『追伸:なお、わらわから指示されたという事は他言無用』


 おい……


 僕が突っ込もうとしたが、その前に樒が口を開く。


「有森ちゃん。ここに追伸があるけど読んだ?」

「はい? 読みましたけど……」

「書いてある意味、分かった?」

「その……最初の方は分かったのだけど、最後に書いてある言葉の意味が分からなくて……『ほかことむよう』ってどういう意味ですか?」


 樒は困ったような顔をした後、僕とミクちゃんを見比べてからミクちゃんの肩を叩く。


「ミクちゃん。説明お願い」

「はーい。あのねえ、有森さん」


 ミクちゃんは、スマホ画面に表示されている『他言無用』を指さす。

「これは『ほかことむよう』じゃなくて『たごんむよう』と読むのよ」

「ああ、そうなのですか」

「それでえ、他言無用の意味は『誰にも言ってはいけないよ』という事」


 これが小六と中一の学力差なのか? それともこの子が国語に弱いのか、ミクちゃんが陰陽師の教育を受けていたからなのか?


「そうだったのですか。え? 私……喋っちゃった」

「良いのよ、良いのよ、気にしなくて。小学生相手に、難しい言葉を使う方が悪いのだから」

「え……でも……」

「それに、最初の方に『誠意をこめてお願いするぞよ』って書いてあったじゃない。包み隠さずすべてを話さないと、誠意なんて無いわよ」

「はあ、そうですね。私も誠意をこめろと言われたから、隠し事はしちゃいけないのかなって」

「それでいいのよ。それでさあ、有森さんはまだ、寒太君を生き返らせるのはやめて欲しいのかな?」


 有森さんは、しばしの間沈黙した。


 少しして、絞り出すように言葉を紡ぐ。


「分からないのです」


 分からない?


「最初は、寒太君なんて死んじゃえばいいと思っていました。でも……寒太君を、踏切に置き去りにしたあの日、私は凄く怖くなってしまったのです」


 まあ、そうだろうな。いくら憎くても、自分が直接手を下したわけじゃなくても、人の死に関わってしまったら辛いだろう。


「寒太君が生きていると分かった時は、すごくほっとしました。でも、また寒太君が帰ってくると思うと怖くて……」


 ハッ! うっかりしていたけど、寒太は大丈夫か?


 有森さんの言っている事を聞いて、悪霊化していないだろうか?


 え?


 寒太の方を見ると、涙を流していた。


「寒太。泣いているのか?」

「俺……馬鹿だった。やっと分かったよ。俺……有森に、ヒドい事をしていたって……嫌われて当然だよな」


 寒太……


「でもさ、俺が生き帰っても、また有森をイジメると思う」

「どうしてだよ? 分かったのなら、やめればいいだけだろ」


 寒太は首を横に振る。


「無理だ。俺は、自分がどんな奴だか分かっている。俺は、誰かをイジメたいという気持ちが、抑えきれなくなるんだ。もし生き返って、有森をイジメるのをやめたとしても、今度は別の誰かをイジメると思う。俺はそういう奴なんだよ」


 そのまま寒太はロックさんのところへ行った。


「死神のお兄さん。もう、良いよ。俺の魂の緒を切っちゃってくれ」


 ロックさんは渋い顔をして答える。


「まあ、待て。まだ生き返れないわけじゃない」

「でも、生き返ったら俺……また悪い事をしそうだし……」

「おまえなあ、自分のやっていた事が悪い事と分かったのなら、生き返ってから、それを直していけばいいじゃないか」

「でも……」

「それにだな、閻魔様の許可が下りていないので、まだおまえの魂の緒を切る事はできないんだよ」


 ん? 強い霊気が来る。


 この霊気は?


 霊気の流れてくる方向へ目を向けると、空間が歪んでいる。


 その空間の歪みから、這い出してきたのは黒いワンピースを纏った女の子。


 シーちゃん! 帰ってきちゃったか!

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