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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
嫌悪の魔神

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257/289

また霊界スマホか

 この子は、タンハーから指示を受けていたというのか。


「私はハーちゃんから、スマホを渡されたのです」


 そう言って、有森さんはポケットからスマホを取り出して僕に見せた。


「ハーちゃんは、このスマホをくれたの?」


 ずいぶん太っ腹だな。


「いえ、貸してくれたのです。用事が済んだら、スマホは何もしなくても自動的にハーちゃんの手元に戻るから、気にするなと言っていました」


 そうか、また霊界スマホだな。


 小学生のスマホは、いろいろと制限があって連絡が取りにくいからそうしたのだろう。


「そして、用事ができたら、メールで呼び出すから、いつでも出かけられるように用意していろと言って……」

「それって、何時頃の事かな?」


 有森さんは、しばらく考え込んだ。


「十二時ぐらいだったと思います?」


 僕らが、学校で帰り支度をしている頃か。


 つまり、その時点でタンハーは僕達の動きを知っていたわけだな。


 僕らがコンビニの窓から、タンハーの姿を見かけたのは十三時半頃。


 降真(こうま)亜羅(あら)の家から寒太を連れ出して、僕らの前に来るには十分な時間だ。


「その後、ハーちゃんはどうしたの?」

「その……」


 有森さんは、しばらく言いにくそうにしてから口を開く。


「信じてもらえるかな?」


 こういう風に言うという事は、信じられないものを見たようだ。


 タンハーがやりそうな事だとすると……


「目の前で、ハーちゃんが突然消えたのじゃないかな?」

「な……なんでそれを?」

「あいつは、そういう事ができるんだよ」

「え?」

「僕達は以前から、あいつの事を知っていたのでね」

「そうだったのですか」

「それで、ハーちゃんからの指示はあったのかな?」


 有森さんは、コクっと頷く。


「今日のお昼前に『◯◯交番まで来い』とメールがあって」

「そこで、僕達の邪魔をするように言われたのだね」

「はい。それと、そこであなた達に『寒太君を生き返らせないで』とお願いするように言われたのです」

「他には?」

「それだけです」


 たったこれだけの事をさせるために、霊界スマホまで貸し出してこの女の子を動かしたのか?


 そもそも、僕達にとってこの子のやった事は、それほど邪魔にはなっていない。


 いや、タンハーの目的は、僕達の邪魔をする事ではなかったのでは?


 寒太の方を見ると、ほうけた顔をしていた。


 タンハーは渇愛の魔神。愛に飢えている人間を見抜ける。


 この女の子に対する、寒太の気持ちも見抜いていたのだろう。


 だから、寒太に聞こえるように、この子にあんな事を言わせた。


 寒太の悪霊化を促進するために……

 

「ねえ、有森ちゃん」


 樒に名前を呼ばれて、有森さんは振り向く。


「今、あんたがここへ来たのも、ハーちゃんの指示なの?」


 有森さんはうなずく。


「さっきメールが来て……」


 有森さんはスマホを差し出した。


 そこにメールの文面が表示されている。


『水神様の祠に急いでくるぞよ。そこに寒太を生き返らせようとしている奴らがいるはずじゃ。そいつらに、寒太を生き返らせないよう、誠意をこめてお願いするぞよ』


 なるほど……


 メールの時間を見ると、タンハーが樒に殴り倒された直後。


 あの時にメールを送ったのか。

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