また霊界スマホか
この子は、タンハーから指示を受けていたというのか。
「私はハーちゃんから、スマホを渡されたのです」
そう言って、有森さんはポケットからスマホを取り出して僕に見せた。
「ハーちゃんは、このスマホをくれたの?」
ずいぶん太っ腹だな。
「いえ、貸してくれたのです。用事が済んだら、スマホは何もしなくても自動的にハーちゃんの手元に戻るから、気にするなと言っていました」
そうか、また霊界スマホだな。
小学生のスマホは、いろいろと制限があって連絡が取りにくいからそうしたのだろう。
「そして、用事ができたら、メールで呼び出すから、いつでも出かけられるように用意していろと言って……」
「それって、何時頃の事かな?」
有森さんは、しばらく考え込んだ。
「十二時ぐらいだったと思います?」
僕らが、学校で帰り支度をしている頃か。
つまり、その時点でタンハーは僕達の動きを知っていたわけだな。
僕らがコンビニの窓から、タンハーの姿を見かけたのは十三時半頃。
降真亜羅の家から寒太を連れ出して、僕らの前に来るには十分な時間だ。
「その後、ハーちゃんはどうしたの?」
「その……」
有森さんは、しばらく言いにくそうにしてから口を開く。
「信じてもらえるかな?」
こういう風に言うという事は、信じられないものを見たようだ。
タンハーがやりそうな事だとすると……
「目の前で、ハーちゃんが突然消えたのじゃないかな?」
「な……なんでそれを?」
「あいつは、そういう事ができるんだよ」
「え?」
「僕達は以前から、あいつの事を知っていたのでね」
「そうだったのですか」
「それで、ハーちゃんからの指示はあったのかな?」
有森さんは、コクっと頷く。
「今日のお昼前に『◯◯交番まで来い』とメールがあって」
「そこで、僕達の邪魔をするように言われたのだね」
「はい。それと、そこであなた達に『寒太君を生き返らせないで』とお願いするように言われたのです」
「他には?」
「それだけです」
たったこれだけの事をさせるために、霊界スマホまで貸し出してこの女の子を動かしたのか?
そもそも、僕達にとってこの子のやった事は、それほど邪魔にはなっていない。
いや、タンハーの目的は、僕達の邪魔をする事ではなかったのでは?
寒太の方を見ると、ほうけた顔をしていた。
タンハーは渇愛の魔神。愛に飢えている人間を見抜ける。
この女の子に対する、寒太の気持ちも見抜いていたのだろう。
だから、寒太に聞こえるように、この子にあんな事を言わせた。
寒太の悪霊化を促進するために……
「ねえ、有森ちゃん」
樒に名前を呼ばれて、有森さんは振り向く。
「今、あんたがここへ来たのも、ハーちゃんの指示なの?」
有森さんはうなずく。
「さっきメールが来て……」
有森さんはスマホを差し出した。
そこにメールの文面が表示されている。
『水神様の祠に急いでくるぞよ。そこに寒太を生き返らせようとしている奴らがいるはずじゃ。そいつらに、寒太を生き返らせないよう、誠意をこめてお願いするぞよ』
なるほど……
メールの時間を見ると、タンハーが樒に殴り倒された直後。
あの時にメールを送ったのか。




