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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
嫌悪の魔神

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255/289

私を霊界に連れてって

 有森さんは、思い詰めたような眼差しで僕を見つめてから口を開いた。


「ここで、寒太君を、生き返らせようとしていると聞いたのですが……」

「聞いたって? 誰から?」

「ええっと……本名は分からないけど……ハーちゃんって言っていました」


 タンハーだな。


「それって……おかっぱ頭で、浅黒い肌の女の子かな?」

「そうです。その子です」


 どうやらこの女の子、タンハーから何かを吹き込まれていたようだな。 


「お願いです。寒太君を生き返らせるのなら……」


 そこで有森さんは押し黙る。


「生き返らせるのを、やめて欲しいの?」


 彼女は頷く。


「でも、やめては、くれないのですよね?」


 そりゃあ、やめるわけにはいかないし……


「それなら……いっその事……私を霊界に連れて行って下さい」


 えええええええええ!? いきなり何を?

 

「君……何を言ってるのか、分かっているの? 霊界へ行くって、死ぬ事だよ」 


 僕の問いかけに、有森さんは小さく頷く。


「分かっています」

「君は死にたいの?」

「死にたくは……ないです」

「じゃあなんで?」

「もう、嫌なのです。寒太君に、イジメられるのは……」


 それから、彼女は事情を話し始めた。


「寒太君を踏切に残してきた翌日、私は最初学校を休みました。でも、友達からのメールで、寒太君が休んでいる事が分かったので、二限目から登校したのです」


 友達って、たぶん柴田さんの事だな。


「そしたら、学校がとても楽しかったのです」

「楽しかったの?」

「寒太君が怖くて、いつもは学校では怯えていたのに、辛かったのに……寒太君がいないだけで、学校がすごく楽しくなったのです」


 寒太の方を見ると、ひどくショックを受けていた。


「なんでだよ? なんで俺がいないと、楽しいんだよ?」


 だから、霊感のない有森さんに、幽霊のおまえが話しかけたって聞こえないって……


「寒太君」


 ミクちゃんが、顔をしかめて寒太に詰め寄る。


「あたし言ったよね。イジメられて喜ぶ女の子なんていないって。そんな事したら、女の子は君の事を大嫌いになるって」

「え……でも……」

「あたしの言った事は、嘘だとでも思っていたの?」


 ミクちゃんは、有森さんの方を指さす。


「今この子の言った事が、現実なのよ」

「そ……そんな……俺、本当に有森に嫌われていたの?」


 だから、そう言っているのに、なんでこいつは自覚できないんだ?


 有森さんは、さらに話を続ける。


「翌日の土曜授業は、朝からずっと楽しかったのです。寒太君のいない学校が、こんなに良い場所だったなんて初めて知りました。だから、思いました。このまま寒太君が、帰って来なければいいと……でも……」

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