消えていく光
追いかけようと思う間もなく、寒太の姿は曲がり角の向こうへ消えていった。
どうやら目を離している隙に、寒太の身体は別の悪霊が入り込んでしまったらしい。
まあ、別のと言っても、どうせ先に取り憑いていたアラティ配下の悪霊だろうけど……
群霊が僕達と戦っている間、近くにでも隠れていたのだろう。
だけど無駄。
寒太の身体から発している光がある限り、追跡はいくらでもできるし……
あれ?
「気のせいかな。光が弱くなっているような……」
「優樹君。気のせいなんかじゃないよ」
ミクちゃんが光の方を指さす。
「あの光、さっきよりも弱くなっている」
「やられたわね。群霊を私達にけしかけたのは、時間切れで光が消えるのを待っていたんだわ」
そういう事だったのか。
「でも、光はまだ完全には消えていない。行くわよ!」
樒に促されて僕とミクちゃんも走り出したが、さっきの戦いで三人とも疲れ切ったのかスピードが出ない。
そうこうしている間に、寒太から発している光はどんどん弱くなっていく。
不意に、樒が立ち止まった。
「二人ともストップ」
僕とミクちゃんも樒のそばに立ち止まる。
「このスピードだと、光が消える前に追いつけないわね」
「じゃあ樒。どうするんだ?」
「うーん……ミクちゃん。まだ式神使える?」
「今日は、もう無理だよう」
「そっか。じゃあ仕方ない。一度、戻ってロックさんと相談しましょう」
僕達は道を変えて、ロックさんが待つ水神様の祠へと向かった。
ん? これは……
僕がその事に気がついたのは、祠まであと少しのところまできたときの事。
瘴気が弱くなっている。
その事には、樒もミクちゃんも気がついていた。
樒はリュックを外して中を覗き込み、叫ぶ。
「うわ! 真っ黒!」
「樒、何かあったの?」「どうしたの? 樒ちゃん」
「見てみ」
樒がリュックから取り出したのは、先ほど群霊を吸い込んだ悪霊吸引瓶。
さっきは透明だったのに、今は濃密な瘴気が瓶の内部で渦巻きドス黒く染まっていた。
なるほど、瘴気の発生源は群霊だったのか。
それが取り除かれたので、瘴気地帯の瘴気が弱くなったのだな。
「樒ちゃん。これ……爆発しないかな?」
ミクちゃんが恐る恐ると言う。
「ううん、どうだろう? 死神からの供与品だし、そうそう壊れることはないと思うけど……」
「樒、これは、急いでロックさんに見せた方が良いんじゃないかな?」
「そうね。急ぎましょう」
そして、僕達は水神様の祠に向かって駆け出した。




