式神vs悪霊
空中に持ち上がった縁台は、長年風雨に晒されて汚れているが、あまり痛んでいる様子はない。
腐食に強い、アルミ製のようだ。
どっちにしても、あれをぶつけられたらかなり痛そう。
「食らえ!」
縁台は、僕にめがけて飛んできた。
だめだ! 避けられない!
思わず目を瞑る。
「ブロック!」
ん? ミクちゃんの声?
恐る恐る目を開くと、ミクちゃんの式神アクロが縁台を受け止めていた。
「トス!」
ミクちゃんがそう叫ぶと、式神はバレーボールのトスの要領で縁台を高々と跳ね上げた。
さらに式神は大きくジャンプする。
「アタック!」
式神は縁台を叩き落とす。
庭で呆然と様子を見ていた悪霊髑髏に向かい、縁台は一直線に落ちていった。
そのまま髑髏に縁台は激突。
周囲は土煙に包まれる。
「ミクちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。優樹君」
だが、安心したのもつかの間、もうもうと立ち込める土煙の中から髑髏が出てきた。
「馬鹿め! 霊体の俺に、こんな攻撃利くか!」
「そっか。物理攻撃はだめなんだっけ」
ミクちゃんは上を見上げた。
その視線の先に式神が浮いている。
「急降下! 式神エルボー!」
式神は急降下すると、髑髏の天辺に肘打を叩き込んだ。
「ぐおお!」
髑髏は苦しそうに悲鳴を上げる。
どうやら式神の攻撃は利くみたいだ。
「式神パンチ! 全体重をかけて打つべし!」
式神の右ストレートが、髑髏の左頬にめり込む。
「ぐぎゃああ」
ミクちゃんは追撃を緩めない。
「式神キック!」
式神の放った後ろ回し蹴りを食らった髑髏は、悲鳴を上げることもなく黒い霧となって霧散した。
もちろん、僕はミクちゃんの戦いぶりをぼうっと見ていたわけではない。
群霊に向かって退魔銃を撃ち続け、樒も九字を切り悪霊髑髏の数を減らしている。
「ええい! 生意気な小娘どもめ! 無駄な事はやめろ!」
だから、僕を小娘の中に含めるな!
「だが、小娘どもがいくらやっても、俺の配下を消し切る事などできぬぞ」
「それもそうね」
樒はそういうと、ミクちゃんの方を向く。
「式神チョップ!」
ちょうどその時、ミクちゃんの式神は髑髏の一つに空手チョップを見舞っていた。
「チョップ! チョップ! チョップ!」
数発のチョップを食らって、悪霊髑髏は霧散する。
その頃合いを見て樒は声をかけた。
「ミクちゃん。ウサギ式神を出して。奴を分析してほしいの」
「はい」
ミクちゃんは、懐から人型に切り抜いた白い紙を取り出した。
「出よ! 式神」
ミクちゃんが地面に叩き付けた人型は、みるみるうちに白いウサギの姿になる。
「お呼びでしょうか? ミク様」
「樒ちゃんが、悪霊を分析してほしいと言っているの」
「かしこまりました」
ウサギ式神は、樒の足下へ行く。
「樒様。何を分析いたします?」
樒は群霊を指さす。
「奴の残りの数を確認して。それと、奴が取り憑いている子供の中にも何体いるか」
「かしこまりました。しばしお待ちを」
ウサギ式神の長い耳がピコピコと上下する。
「分かりました。現在あそこにいるお子様に取り憑いているのは、群霊の本体となっている悪霊一体だけです。残りの悪霊はすべて外に出ています。その数は二十二体」
「二十二体ね」
樒は、僕とミクちゃんの方を振り向く
「優樹、ミクちゃん。後、五体消して。残りは私が片付ける」
「分かった」「分かったわ」
とにかく、ここは樒の言葉を信じよう。
僕は退魔銃のマガジンを交換すると、群霊に向かって撃ち続けた。




