群霊
それは大小様々な人間の髑髏を、繋ぎ合わせたような姿をしていた。
髑髏の一つ一つが、口を開け閉めしてガチガチと歯を鳴らしている。
これって……
「なるほど、群霊ね」
群霊?
「樒。群霊って、霊の集まりって事だよね?」
「そうよ」
「さっき、この霊と言葉を交わした時は、一つの霊みたいだったけど……」
「これはちょっと特殊な群霊よ。私も一度しか見たことないけど、集まってきた霊が、まるで一つの存在かのように振る舞っているのよね」
「一つの存在かのように……? 中核となる霊が、いるんじゃないのかな?」
「そうらしいわ。この手の群霊には、中核となる悪霊がいるらしいの。そいつに次々と不成仏霊が引き寄せられて、合体していった霊体がこいつよ」
つまり、この髑髏一つ一つが独立した霊!?
「くくく。小娘どもよ。覚悟するがいい」
だから、僕を小娘の一人に勘定するな!
突如、一際大きな髑髏がガバッと口を開いた。
開いた口から、ドス黒い煙の様なものを吹き付けてくる。
これは濃密な瘴気!
こんなものをまともに食らったら、人はたちまち衰弱死してしまう。
だが……
瘴気は僕達に届く寸前、見えない壁に阻まれた。
これは結界!?
胸元を見ると、さっきロックさんからもらった勾玉ペンダントが輝いていた。
これが、結界を張っているのか。
僕のペンダントだけじゃない。
左を見ると、ミクちゃんが左腕に巻き付けていた数珠も光り輝き、彼女の周囲にはバリアのような結界が形成されていた。
樒の方に視線を変えると、いつの間にか彼女は右手に金剛杵を握っている。
それも眩く輝き、樒の周囲に結界を張っていた。
「結界か。小癪な小娘どもめ」
だからあ、僕を小娘に含めるな!
「だが、そんな結界がいつまでも保つと思うなよ」
「それはどうかしらね。私達の結界は、死神からもらった神器で張っている。簡単には、破られないわよ」
「なに? 死神だと……」
「あんたの方こそ、九字が利かない理由がわかったわ」
そう言って樒は右手を前に伸ばした。
「臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在・前!」
樒に向かって瘴気を吐いていた髑髏が霧散した。
「表面の一体だけが九字を受け止めて消滅し、後にいる霊体を守っていたというところかしら」
「ふん! それが分かったとしてなんになる。おまえ一人で、俺の配下の悪霊どもをすべて消し切れるものか」
「あら? 私一人じゃないわよ」
樒の言う通り。
寒太の中にいる霊体には無理だが、寒太の外へ出てきた霊体なら退魔銃が通用する。
僕は懐のショルダーホルスターから、退魔銃を抜いて悪霊に向けて構えた。
「銃だと? 馬鹿め! 霊体である俺に、銃など……」
かまわず僕はトリガーを引く。
退魔銃から放たれた、梵字を刻んだ退魔弾が髑髏の一つに命中。
「ぐわあああ!」
悲鳴を上げる髑髏に、さらに退魔弾を撃ちこむ。
五発目を撃ち込んだ時、髑髏は消滅した。
髑髏一つに、退魔弾五発でいけるみたいだ。
「おのれ稚児め!」
やっと、小娘はやめてくれたか。稚児も嫌なのですけど……
とりあえず腹立つから、今『稚児』と言った髑髏に次の狙いを定める。
トリガーを引いた瞬間、髑髏は群霊から離れて飛び出した。
退魔弾は、後にいた別の髑髏に当たったけど、離れた髑髏はどこに?
いた!
髑髏は、庭に放置されていた縁台の下に潜り込んでいた。
「おまえ達に瘴気は利かぬようだが、これならどうだ。結界では防げぬぞ!」
髑髏がそう言った直後、縁台が空中に持ち上がる。
うそ!
物理攻撃もできるの?




