勾玉のペンダント
ロックさんは、マンションの壁に現れた光点を指さした。
「この光は、鉄でもコンクリートでも遮ることはできない。あらゆる遮蔽物を通過できる」
まるでニュートリノだな。
「俺は寒太の傍から離れることができない。すまないが、君達だけで行ってきてくれ」
もちろん、そのつもりだ。
そもそも物体に触れることができないロックさんでは、マンション内に入っても扉を開くことができない。
それでは寒太を連れ出すことは難しい。
しかし……
「ロックさん。マンション内に入ることはできますが、寒太が部屋の中に閉じこもって鍵をかけてしまったら、僕らにはどうすることも……」
「それは大丈夫だ」
え?
ロックさんの指さす先では、壁に現れた光点が移動しているのが分かる。
という事は、寒太の身体が移動しているのか?
「なんで? 部屋に閉じこもっていたら安全なのに、なんで動き出したのかしら?」
「樒ちゃん。おそらく、このマンション内には魔神達の隠れ家があるのだろう。寒太の身体はそこに隠れていたわけだが、寒太の身体が突然光を出したので、奴ら慌てたのだろうな」
「そりゃあ慌てるだろうけど、部屋から出る必要はないんじゃないかしら?」
「いや、出る必要があるのだよ。このまま寒太の身体を置いておいたら、隠れ家の場所が俺達死神にばれるからな」
「あ! なるほど」
「俺としては隠れ家の場所も知りたいが、今は寒太の身体を取り返す方が先だ」
そう言ってからロックさんは懐から、ペンダントの様な物を取り出した。
「優樹君。これを」
ロックさんが僕に差し出したのは、細い銀色の鎖に緑色の勾玉がついたペンダント。
「邪気を払う神器だ。瘴気地帯にいる間は、それを身につけていてくれ」
「ありがとうございます。後で、ちゃんとお返ししますね」
「いや。返さなくてもいい。それは君にあげるよ」
「え? いいのですか?」
「ああ。これは今回の報酬の一部だと思ってくれ」
「あ! 優樹、いいなあ。ロックさん。私には?」
「樒ちゃんには、前に金剛杵を上げただろう。あれの方が遙かに、防御力は強いし攻撃にも使えるが……」
「えええ!? 優樹のペンダントの方が可愛いよ。欲しいよ」
あのなあ……
ロックさんは、苦笑いを浮かべてから言った。
「まあ、防御の神器が二つあってもいいだろう。無事に帰ってきたら樒ちゃんにもペンダントをやるよ」
「わーい!」
ええい! 子供みたいにはしゃぐな!
ん? ミクちゃんがロックさんの方へ歩み寄っていくが……まさか、ミクちゃんまで?
「ロックさん」
ミクちゃんに声をかけられてロックさんはギョッとする。
「き……君もか?」
「いいえ、あたしは神器はいりません」
「そ……そうか」
「その分、現金報酬を増やすように、協会の人に言ってもらえませんか?」
ミクちゃん……またガチャを回しすぎたな……
「分かった。それは俺から掛け合っておく」
「ありがとうございます」
「そりより、寒太の身体がマンションから逃げ出しそうだ。急いでくれ」
「はーい! 優樹! ミクちゃん! 行くわよ!」
僕たちは瘴気地帯に向かって行った。




