魔神を召喚したのは?
「それってどういう事? なんでタンハーだけ違うの?」
知っているけど、ここは知らないふりして聞いてみた。
悪霊は最初、僕がなぜそんな事を聞くのか分からなかったようだが、すぐに合点が言ったかのように話し出す。
「ああ、そうか。おまえはタンハー様がどんな姿をしているか知らないから、そんな事を言ったのだな」
まあ、タンハーにはすでに何度も会っているが……
「タンハー様は人間に転生しているが、今はガキなのだよ」
知っている。
「俺には、ガキを相手にする性癖はないので」
この悪霊の性癖など今はどうでもいい。
ただ、こいつはラーガ達魔神の手下のようだが、やはり僕達との関わりは知らなかったようだという事は分かった。
そうなると、今はこいつに『瓶から出られるかもしれない』という希望を持たせてやるのが肝心だな。
「魔王マーラの娘を敵に回すのは、確かにヤバいね」
「そうだろう、そうだろう。だが、今すぐ俺をこの瓶から解放してくれたら、許してやらない事もないぞ」
「でもさ、あんたのバックに本当にそんな凄い魔神がいるの? ここから出してほしくて出鱈目言ってない?」
「なに? 俺が嘘を付くとでも思っているのか!」
「うん。思っている」
むしろなぜ、信用されると思えるのだ?
「さっき僕に、嘘を付いたばかりじゃん」
「い……いや、確かにさっきは嘘を付いたが、今言ったことは本当だ。信じてくれ」
「でもさ、時間が合わないのだよね」
「時間?」
「あんたが、寒介の身体に憑いたのは二十四年前でしょ?」
「いかにも。それがどうかしたのか?」
「さっきあんたの言った話では、タンハーはまだ子供だそうじゃないか」
「そうだが」
「アラティとラーガは大人のようだが、二十四年前では、まだ現世に転生していないのでは?」
「何かと思えばその事か。確かに俺が寒介に憑いた時には、アラティ様もタンハー様も転生していなかったし、ラーガ様も幼児だった。だが、魔神様が俺達悪霊を従えるのに、肉体は別に必要ないのだよ」
「そうなの?」
「そうなんだよ。そもそも、転生していたら地獄にいる俺達を連れ出すことができないだろう。俺達を現世に送り出した後で、魔神様達は転生したのだよ」
「でも、転生していないと、現世での活動に支障がありそうだけど」
「それは大丈夫だ。現世でラーガ様を召還した女がいてな、そいつがいろいろと世話をしてくれた」
「その女って、人間なの?」
「当たり前だろ。生きている人間が現世で召還の儀式をやらなければ、魔神様だって現世に出てこられない」
「その女の名前は?」
「なぜそんな事を聞く?」
「名前を聞いて、その女が実在していたのを確認できれば、あんたの言う事を信用できるかもと思ってね」
「なるほど。女の名前は確か……北条……北条菖蒲だったかな」
北条菖蒲!
やはり、ラーガ達魔神を召還したのはあの女だったのか。




