それ、タンハーが聞いたら怒るのでは?
悪霊はさらに話を続けた。
「もし俺が魔神様に逆らったら、また地獄に戻されてしまうそうだ。これがどういう事だか分かるか?」
「分かんないなあ」
いや、本当は分かるけどね。
ようするに、こいつが言いたいのは『俺に逆らうと、魔神様に言いつけて、おまえらを生きたまま地獄に連れて行くぞ』と脅したいのだろう。
さっきアラティとタンハーも、こんな話で地縛霊達を脅していたし……
大方、こいつら悪霊もアラティ達から『地獄に戻されたくなくば、指示に従え』とでも言われているのだろうな。
その事は分かっているのだが、ここは分からないふりをしていた方が、こいつからいろいろと聞き出せそうだ。
「魔神様はな、魂を地獄から連れ出せるだけでなく、生きている人の魂を、地獄に送り込むこともできるんだ」
実際には、魔神にこんな事はできない。
しかし、こいつは信じているようだ。
「分かるか小僧。魔神様に楯突いたおまえも、地獄に引きずり込まれるのだよ」
「ふうん。それは怖いなあ」
「おまえ……本気にしていないな」
うん。本気にしていない。だって百パー嘘だし……
しかし、こいつはここで僕を脅かすことができれば、瓶から出してもらえると期待しているようだ。
ならば、期待を利用させてもらう。
「だってさあ、僕を殺すというなら分かるけど、魂を地獄に連れて行くなんて、閻魔様から権限を与えられている死神じゃなきゃできないと思うけど」
「え? いやいやいや、魔神様だって魂を人から抜き取って地獄に連れ去る……ぐらいの事ができる……と思うのだが……」
あ! こいつ自信がぐらついてきたな。
「なんか、信用できないなあ」
「なんだと!?」
「魔神と言っても、ピンからキリまでいるし……あなたのバックにいるという魔神様って、誰ですか?」
「そんな事を聞いてどうする?」
「名前を言えないの? 言えないほどしょぼい魔神なんだ」
「んなわけあるか! 聞いて驚け! 俺の背後に付いているのは、第六天に住まう魔王マーラ様の娘、ラーガ様とその妹達、アラティ様とタンハー様よ。おまえも霊能者なら、名前ぐらい聞き覚えがあるだろう?」
うん。知ってた。
「その三人って、お釈迦様にハニトラをかけようとしたけど、相手にされなくて失敗した魔神でしょ」
「ん! まあ……相手が釈迦如来ともなれば、魔神様でも分が悪いわな。俺ならラーガ様やアラティ様に、ハニトラかけられたらイチコロだがな」
「あれ? 一人抜けてない?」
「いや、さすがにタンハー様はねえだろ。まあ、あれがいいという奴もいるらしいが、俺は違うので……」
それ、タンハーが聞いたら怒るのでは……




