退魔銃だけは勘弁してあげます
僕は、再び悪霊を睨みつけた。
「どこのどなたかは存じませぬが、あなたはすでにお亡くなりになっています。このお方の身体は諦めて、霊界へお戻り下さい」
「黙れ! 小僧! 俺の方がそいつより、その身体を上手く使えるのだ! 寒介の身体を俺に寄越せ!」
「上手く使えるかどうかなど関係ありません。この身体は、寒介さんの物です。あなたに、この身体を使う権限などありません」
「黙れ! 黙れ! その身体を誰が使うかなど、貴様のような小僧が決める事ではない!」
「ならば、強制除霊いたします」
僕は、退魔銃を懐から取り出して構えた。
「銃だと? わっはははは! バカめ! 霊体の俺に、銃など……」
かまわず僕は引き金を引く。周囲を飛び回る子鬼に向かって。
「効くわけが……」
「くきゅう!」
退魔弾を食らった子鬼は、可愛らしい悲鳴を上げながら次々と消滅していった。
「ぐきゅう!」
消滅と同時に、今まで小鬼達が持っていたものが、次々と床に落ちていく。
ガチャン!
あ! ティーカップが割れちゃったよ。
あれ高そうだな。弁償しろ、なんて言われないかな?
「な……なんだ? その銃は?」
悪霊の質問を無視して、僕は悪霊本体に向かって撃った。
「ぐぎゃああああ!」
胸に退魔弾を受けた悪霊は、苦しみのたうち回る。
さらにもう一発。
悪霊の左腕が消滅した。
「ぐおおお! ま……待て……待ってくれ! 小僧。俺が悪かった」
「あなたが、悪い事は知っています」
そう言ってから、僕は退魔銃を悪霊の頭に向ける。
「ま……待ってくれ! 寒介の身体は諦める。だから、それだけは勘弁してくれ」
「僕が勘弁したら、その直後に『諦めると約束したな。あれは嘘だ』と言って、身体を乗っ取ろうとするのでしょ?」
「ギク! そ……そんな事は……考えていないぞ」
「今、『ギク!』て言いましたよね?」
「言ってない。そんな事は、言ってはいないぞ」
「ふーん」
僕は扉の当たりにチラっと視線を走らせる。
「良いでしょう。退魔銃だけは、勘弁してあげます」
僕は退魔銃を懐にしまった。
その瞬間、悪霊はニヤリと笑みを浮かべる。
そして僕に襲いかかってきた。
「バーカめ! 悪霊の言うことなんか、信じる奴があるか!」
「いえ、信じていませんが」
「へ?」
「退魔銃は勘弁してあげると言いましたが、あなたを見逃すとは言っていません」
「どういう意味だ? どわわわ! 吸い込まれるう!」
悪霊は気が付かなかったようだが、僕と話をしている間に奴の背後では、樒が悪霊回収瓶を構えていたのだ。




