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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
嫌悪の魔神

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235/289

退魔銃だけは勘弁してあげます

 僕は、再び悪霊を睨みつけた。

 

「どこのどなたかは存じませぬが、あなたはすでにお亡くなりになっています。このお方の身体は諦めて、霊界へお戻り下さい」

「黙れ! 小僧! 俺の方がそいつより、その身体を上手く使えるのだ! 寒介の身体を俺に寄越せ!」

「上手く使えるかどうかなど関係ありません。この身体は、寒介さんの物です。あなたに、この身体を使う権限などありません」

「黙れ! 黙れ! その身体を誰が使うかなど、貴様のような小僧が決める事ではない!」

「ならば、強制除霊いたします」


 僕は、退魔銃を懐から取り出して構えた。


「銃だと? わっはははは! バカめ! 霊体の俺に、銃など……」


 かまわず僕は引き金を引く。周囲を飛び回る子鬼に向かって。


「効くわけが……」 

「くきゅう!」


 退魔弾を食らった子鬼は、可愛らしい悲鳴を上げながら次々と消滅していった。


「ぐきゅう!」


 消滅と同時に、今まで小鬼達が持っていたものが、次々と床に落ちていく。


 ガチャン!


 あ! ティーカップが割れちゃったよ。


 あれ高そうだな。弁償しろ、なんて言われないかな?


「な……なんだ? その銃は?」


 悪霊の質問を無視して、僕は悪霊本体に向かって撃った。


「ぐぎゃああああ!」


 胸に退魔弾を受けた悪霊は、苦しみのたうち回る。


 さらにもう一発。


 悪霊の左腕が消滅した。


「ぐおおお! ま……待て……待ってくれ! 小僧。俺が悪かった」

「あなたが、悪い事は知っています」


 そう言ってから、僕は退魔銃を悪霊の頭に向ける。


「ま……待ってくれ! 寒介の身体は諦める。だから、それだけは勘弁してくれ」

「僕が勘弁したら、その直後に『諦めると約束したな。あれは嘘だ』と言って、身体を乗っ取ろうとするのでしょ?」

「ギク! そ……そんな事は……考えていないぞ」

「今、『ギク!』て言いましたよね?」

「言ってない。そんな事は、言ってはいないぞ」

「ふーん」


 僕は扉の当たりにチラっと視線を走らせる。


「良いでしょう。退魔銃だけは、勘弁してあげます」


 僕は退魔銃を懐にしまった。


 その瞬間、悪霊はニヤリと笑みを浮かべる。


 そして僕に襲いかかってきた。


「バーカめ! 悪霊の言うことなんか、信じる奴があるか!」

「いえ、信じていませんが」

「へ?」

「退魔銃は勘弁してあげると言いましたが、あなたを見逃すとは言っていません」

「どういう意味だ? どわわわ! 吸い込まれるう!」


 悪霊は気が付かなかったようだが、僕と話をしている間に奴の背後では、樒が悪霊回収瓶を構えていたのだ。

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