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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
嫌悪の魔神

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233/289

樒は失敗したのか?

 前回は樫原に担がれて入ったリビングルームに再び入った時、寒太の継母はソファでタブレットを見ながらくつろいでいた。


「奥様。寒太坊ちゃんの居場所が、分かったそうです」


 婦人は、僕達の方へ顔を向ける。


「あら? 速かったわね。それで、報酬はいくら欲しいのかしら?」

「報酬は、いらないそうです」

「あら? そうなの?」

「そうだよな?」


 樫原は、念を押すように僕を睨みつける。


「もちろん報酬はいりません。ですが樫原さん。そうやって怖い顔で僕を睨みつけながら言うのは、誤解を招くからやめた方がいいですよ」

「なに?」

「知らない人が見ると、報酬を断るようにあなたが僕に強要したかのように見えますけど」

「なに! 貴様、今更なにを言って!」

「樫原」

「はい。奥様」

「坊やの言う通り、私にはおまえが脅迫して報酬を辞退させたように見えたのだけど……違うのね?」

「ち……違います! 奥様……私は……」

「ほら、言ったじゃない。誤解を招くって」

「やかましい!」 

「とにかく。僕としては、報酬の件は辞退させていただきます」

「なぜ? お金が欲しくないの?」

「いいえ。お金は欲しいですよ。でも、世の中には受け取ってはならないお金もありますので」

「私の報酬は、受け取ってはならないものなの?」

「それはグレーゾーンですので、受け取っても問題はないかもしれません。でも、そういうお金を受け取って、後で破滅した人はいっぱいいるので」

「用心深い子ね。で、寒太はどこにいるの?」

「説明しますから、そのタブレットに地図を表示してもらってもいいですか?」

「え? 良いわよ」


 婦人はタブレットを操作して地図を表示した。


「では、ちょっと失礼します」


 僕はタブレットを操作して、地図の一カ所を拡大した。


 そこはさっき僕達が入った瘴気地帯。


 そこにあるマンションを指さす。


「この建物に、寒太君はいます」

「ここに?」

「当初の予定では、寒太君を見つけたら僕達が連れ出すはずでした。ところが、やっかいな事がありまして」

「やっかいな事?」

「ここは瘴気地帯という場所で、霊能者は入りにくい場所なのです。そのため、寒太君がこの建物に入ったのは確認しましたが、どの部屋にいるかまでは……」

「部屋は分からないけど、そのマンションにいるのは確実なのね?」

「はい。だから、ここは警察を呼んで……」

「必要ないわ」


 え?


「樫原」

「はい。奥様」

「若い衆を、集めてちょうだい」

「は!」


 若い衆って? ここって、そういう業界だったの?

 

 バタン! 


 突然、リビングルームの扉が開いて中年男性が転がり込むように入ってきた。


 誰だろう?


「あなた! どうされたの?」


 婦人が『あなた』って呼んだって事は、この男性が寒太の父親?


 憑いていた悪霊は、どうなったのだろうか?


 樒は、失敗したのかな? 

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