寒太の居場所
「車は、どっちの方向から来るの?」
僕の質問に、寒介は指をさして答える。
寒介の指さす先には、信号機のある交差点があった。
「五分ぐらいしたら、あの交差点を右折してくるはずだ」
「しかし、ここにいながらにして分かるものなの?」
寒介は頷く。
「以前は無理だったが、コツを掴んでからは肉体が見聞きしたことが、霊体の俺でも見聞きできるようになったんだ。まあ、身体の主導権は、悪霊に盗まれたままだがな」
「まあ、それも今日までだね。車が止まったところで、樒が九字を切れば……」
「それはいいのだが、あの大きな姉ちゃんは何をやっているんだ?」
「え?」
あれ? さっきまで、大型バイクの近くにいた樒の姿がない。
「樒は、どこへ行った?」
「あそこだが」
寒介の指さす先は、寒太の家の門。
その前に樒が立ち、屋敷の様子を眺めている。
何をやっとるんじゃあ!
その屋敷の近くで不振な行動をするとヤバいから、ワザワザ少し離れた場所にバイクを止めたというのに……
「樒! 何をやってるの!」
「いやあ、寒太って凄い家に住んでいたんだなって、感心して……」
「分かった。感心したのは分かったから、さあ離れよう」
「なんで?」
「だから……」
「それにしても大きな家ね。どんな悪いことしたら、こんな大きな家に住めるのかしら?」
だからそういう事は……
「失礼な」
「きゃ!」
樒にしては、珍しく可愛らしい悲鳴だな。
いきなりぬっと現れた巨漢には、さしもの樒もビビったようだ。
普段、人を見下ろしているから、自分より背の高い相手への耐性がないのかな?
「な……なんですか!? あなた……」
「お嬢さんこそなんですか? 人の屋敷を不躾にジロジロ見つめて、その上旦那様が何か悪事を働いているかのような発言。聞き捨てなりませんな」
樫原の言うことも、もっともだな。
しかし、ここは何とか誤魔化さないと……
「待って下さい。樫原さん」
「む! 君は、さっきの霊能少年か? こちらのお嬢さんは君の仲間かね?」
「そうなんです。来るなと言ったのに、付いてきちゃって……」
「ちょっと優樹……」
「いいから、ここは僕に任せて」
「う……」
不満だったようだが、樒も僕に考えがあるのが分かったらしく、黙ってくれた。
「で、君はここに何をしに来たのかね?」
「実はですね……」
なんて言って誤魔化すか?
そうだ!
この家を出る前に、寒太を見つけたら報告すると話をしていたな。
「寒太坊ちゃんの居場所が分かったので、報告に上がった次第です」
「なに!?」
うん。これは嘘じゃないな。
水神様の祠の前で、お婆さんが成仏する前に、どこで寒太を見かけたのか思い出してくれたので、大まかな位置は特定できたのだから。
お婆さんは亡くなる前日に、お孫さんが押してくれる車椅子で緑道を散歩していたそうだ。
その時に、寒太そっくりの子供が瘴気地帯の建物の中に入っていくのを見ていた。
調べたら、その建物はマンション。
そのマンションの中に、寒太の身体は隠れているはず。




