奪還計画
信号が赤に変わり、僕はバイクを止めた。
ホルダーに固定したスマホのマップに視線を走らせてから、背後をふり返り大型バイクに跨がっている樒に声をかける。
「樒。次の信号を左に行って。それから一分ほどで、寒太の家に着くよ」
「一分ね」
樒は、横に浮かんでいる寒介の霊に声をかけた。
「どう? 間に合いそう?」
「ああ。奴の車は、渋滞に巻き込まれている。家に着くまでに、十分はかかるな」
「そう」
信号は再び青に変わり、僕はスロットルを回しバイクを発進させた。
なんで、こんなところを走っているのかと言うと、寒介の身体を取り戻すため。
あれから、事情を聞いたところ、寒介が身体を乗っ取られた時に悪霊から言われたらしい。
死神に見つかると、地獄へ連れて行かれると……
だから、さっきみたいに死神が現れると、寒介は姿を隠していたのだ。
しかし、死神が生き霊を連れて行くなんてことは普通やらない。
それどころか、もし死神が事情を知ったら、寒介が身体を取り戻す手助けをしてくれたはず。
だから、これはおそらく寒介が死神などに相談などをさせないために、悪霊が嘘をついたのだろう。
そのせいで、寒介は二十四年間も虚しく自分の身体を追い続けていたのだ。
しかし、樒がいれば身体を取り返す事ができる。
寒太の身体も取り返さなきゃならないが、寒太の身体は少々やっかいなところにいる事が分かった。
ならば、死神が戻ってくる前に、寒介の身体だけでも取り戻そうと、僕と樒は寒太の家に向かったのだ。
ミクちゃんには、寒太と一緒に水神様の祠に残ってもらい、死神が戻ってきたら、すぐに連絡を入れるように頼んである。
ちなみに、寒介の身体は寒太とは違い、魂の緒を辿っていつでも見つける事ができるらしい。
寒太の様に、ジャミングはされていないようだ。
なぜ寒介は、寒太の様にジャミングされていないのかは分からないが、身体の場所が分かるなら取り戻すのは簡単。
樒の九字切りで寒介に取り付いた悪霊を体外に追い出して、その隙に寒介が身体を取り戻せばいい。
寒介の話によれば、悪霊に乗っ取られた身体は車に乗って移動中で、もうすぐ家に帰り着くらしい。
ならば、家の前で待ち伏せして、帰ってきた車に向かって樒が九字切りをすれば、寒介の身体に居座っている悪霊を体外に追い出すことができる。
後は、悪霊が戻ってくる前に、寒介は身体を取り戻せばいい。
寒太の家が見えてきたところで、僕はバイクを停止させた。
周囲を見回し安全を確認してから、路側帯に沿ってバイクを止めてエンジンを切る。
すぐ後ろで、樒もバイクを止めた。
「優樹。ここなの?」
「ああ。あれが寒太の家」
僕は寒太の屋敷を指さした。
さあ、後は車が来るのを待つだけ。




