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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
嫌悪の魔神

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229/289

悪霊に憑かれているのは……

 寒太が二人って、どうなっているのだ?


 片方が、悪霊に乗っ取られた肉体の方か? と、思ったけど両方とも霊体。


 は! まさか!


「いつになったら、俺の身体を取り戻せるんだよ!? クソヘビ! おまえが軽い気持ちで、俺にバチを当てたせいで……」

寒介(かんすけ)。落ち着くニョロ」


 寒介? やはり、寒太ではないのか?


 いや、二人とも顔は似ているが微妙に違う。


「落ち着いていられるかよ! もう、二十四年だぞ! 俺の身体を悪霊に取られてから。その間に身体はすっかり大人になって、さらにこれを見ろ!」


 寒介と呼ばれた少年は、寒太を指さす。


「クソヘビ! おまえ、さっきこいつを俺と間違えただろ?」

「確かに間違えたニョロ」

「なんで、こいつが俺に似ているか分かるか?」

「分からないニョロ」

「分からないのかよ! 悪霊の奴が、乗っ取った俺の身体を使って子供を作ったんだよ。それがこいつだ!」


 やっぱし! 水神様にバチを当てられた少年は、魂が身体を抜けている隙に、悪霊に身体を乗っ取られていたんだ。


 寒太と同じように……


「え? え?」


 事態が飲み込めないのか、寒太はおろおろしていた。


 しばらくして、寒太はミクちゃんの方へ向かう。


「おい! 鏡見せろ」

「寒太君。それが、人にものを頼む態度なの?」

「え? あ! その……鏡を見せて下さい。美しいお姉さま」

「もう一声」

「む……胸の大きい美しいお姉さま」

「はい、良くできました」


 ミクちゃんは、リュックから鏡を出して寒太に向けた。


 寒太はしばしの間、鏡に写った自分と少年を見比べる。


「え? え? なに? 俺が二人いる? なんで?」

「寒太」


 寒太は僕の方をふり向く。


「今の話を聞いたところ、どうやらあの子はおまえのお父さんのようだ」

「え? あれがパパ? だって子供じゃん」

「寒太がお稲荷さんの祠を荒らしたように、おまえのお父さんも水神様の祠を荒らしていたようだ」

「そういえばそんな事、言っていたな」

「そして、バチが当てられたようだが、どうもその時におまえと同じように、身体を悪霊に乗っ取られたらしい」

「えええ!?」

「そうなのでしょ? 寒介さん」


 寒介は僕を向いて答えた。


「あんたの言う通りだ。悪霊に身体を盗られて以来、俺はずっと浮遊霊のままだ」

「なるほど。ところで、どうして寒太が自分の子供だと分かったのですか?」

「俺は二十四年間、身体を取り戻そうとして、俺の身体をつけ回していた。だから、知っているんだよ」


 そうか。


 寒太の家で感じた悪霊の気配。


 寒太の継母が、悪霊に憑かれているのかと思っていたが違った。


 悪霊に憑かれているのは、父親の方だ。

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