悪霊に憑かれているのは……
寒太が二人って、どうなっているのだ?
片方が、悪霊に乗っ取られた肉体の方か? と、思ったけど両方とも霊体。
は! まさか!
「いつになったら、俺の身体を取り戻せるんだよ!? クソヘビ! おまえが軽い気持ちで、俺にバチを当てたせいで……」
「寒介。落ち着くニョロ」
寒介? やはり、寒太ではないのか?
いや、二人とも顔は似ているが微妙に違う。
「落ち着いていられるかよ! もう、二十四年だぞ! 俺の身体を悪霊に取られてから。その間に身体はすっかり大人になって、さらにこれを見ろ!」
寒介と呼ばれた少年は、寒太を指さす。
「クソヘビ! おまえ、さっきこいつを俺と間違えただろ?」
「確かに間違えたニョロ」
「なんで、こいつが俺に似ているか分かるか?」
「分からないニョロ」
「分からないのかよ! 悪霊の奴が、乗っ取った俺の身体を使って子供を作ったんだよ。それがこいつだ!」
やっぱし! 水神様にバチを当てられた少年は、魂が身体を抜けている隙に、悪霊に身体を乗っ取られていたんだ。
寒太と同じように……
「え? え?」
事態が飲み込めないのか、寒太はおろおろしていた。
しばらくして、寒太はミクちゃんの方へ向かう。
「おい! 鏡見せろ」
「寒太君。それが、人にものを頼む態度なの?」
「え? あ! その……鏡を見せて下さい。美しいお姉さま」
「もう一声」
「む……胸の大きい美しいお姉さま」
「はい、良くできました」
ミクちゃんは、リュックから鏡を出して寒太に向けた。
寒太はしばしの間、鏡に写った自分と少年を見比べる。
「え? え? なに? 俺が二人いる? なんで?」
「寒太」
寒太は僕の方をふり向く。
「今の話を聞いたところ、どうやらあの子はおまえのお父さんのようだ」
「え? あれがパパ? だって子供じゃん」
「寒太がお稲荷さんの祠を荒らしたように、おまえのお父さんも水神様の祠を荒らしていたようだ」
「そういえばそんな事、言っていたな」
「そして、バチが当てられたようだが、どうもその時におまえと同じように、身体を悪霊に乗っ取られたらしい」
「えええ!?」
「そうなのでしょ? 寒介さん」
寒介は僕を向いて答えた。
「あんたの言う通りだ。悪霊に身体を盗られて以来、俺はずっと浮遊霊のままだ」
「なるほど。ところで、どうして寒太が自分の子供だと分かったのですか?」
「俺は二十四年間、身体を取り戻そうとして、俺の身体をつけ回していた。だから、知っているんだよ」
そうか。
寒太の家で感じた悪霊の気配。
寒太の継母が、悪霊に憑かれているのかと思っていたが違った。
悪霊に憑かれているのは、父親の方だ。




