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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
嫌悪の魔神

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227/289

水神様

 声の聞こえた方向に目を向けると、そこにあったのは水神様の祠。


 その祠の横にある石灯籠の上では、金色の蛇がトグロを巻いていた。


 蛇と言っても、このあたりに多くいる山かかしとは明らかに違う。


 いや、山かかしに限らず、金色の蛇なんてこの周辺にはいない。


 そもそもこの蛇、本物の蛇ではなく霊的存在だ。


 それも神レベルの……


 蛇の姿をした神様ということは……


「水神様ですか?」

「いかにもニョロ」


 どうやら、この蛇は祠に奉られている水神様らしいのだが……語尾にニョロをつけると、威厳が無くなるなあ。


 ん?


 僕の横では、樒が必死な形相で水神様に手を合わせていた。


「樒……何をしているの?」

「何言っているのよ! 蛇神様と言ったら、金運を授けてくれる神様よ。しかも金色の蛇なら、すごい金運を授けてくれるに違いないわ」


 あっそう……


「そこの女。金運は、そんな簡単に授けてやらないニョロ」

「そんな事言わないで授けて下さいよ。手を合わせるだけで足りないなら、土下座でも五体投地でもやります」

「そんな事をしても無駄にょろ。金運がほしければ、そこの女の様に……」


 水神様は、お婆さんの方に視線を向ける。


「毎日ワシに、美味しい酒をお供えするニョロ。そうしたら、考えても良いニョロ」


 そういえば、蛇系の神様は酒が好きって言うな。


「あらあら」


 それを聞いてお婆さんは微笑む。


「私の買った株が、不思議とよく値上がりすると思っていたら、水神様の御利益でしたか。ありがとうございます。お陰様で、豊かな老後を送れました」

「いやいや、美味しい酒をもらったのだから当然ニョロ」


 それを聞いて樒は目を輝かせる。


「お酒ですね! お酒をお供えすればいいのですね! 分かりました! 毎日お酒をお供えします」

「おまえには、無理ニョロ」

「え? どうしてですか?」

「おまえ、歳はいくつニョロ?」

「十六です」

「今の人間の法律では、二十歳未満は酒を買えないはずニョロ」


 この神様、人間の事情に詳しいな。


「え? いや、自分で飲むわけじゃないから、買うだけなら」

「だめよ。お嬢ちゃん」


 そう言ったのは、お婆さん。


「お酒を買うときは、店員さんに年齢を確認されるから、自分が飲まなくても買うことはできないわ」

「え? そうなんすか? そうだ! 自動販売機なら」

「樒、やめとけ。女子高生が自販機で酒を買っているところを誰かに見つかったら、通報されるぞ」

「そ……そっか」

「それより、君達。さっきから、死神が迎えに来ているニョロ」


 え?


 水神様の言うとおり、いつの間にか僕らの背後に少女死神……シーちゃんが立っていた。


「あらシーちゃん?」


 樒がシーちゃんに手を振る。


「どうも……こんにちは」

「このお婆さんのお迎えって、あんただったの?」

「はい。死神は、神手不足なもので……」

「いるなら、声をかけてくれても……」

「いえ、みなさんの用事が済むまで待とうと思って……」

「そんなことを気にする事ないニョロ。この者達の質問には、僕が答えておくニョロ。死神は、その女を連れていっていいニョロ」

「そうですか。それでは、お婆さん。魂の緒を切りますね。えい!」


 シーちゃんが鎌をふるい、お婆さんの頭から延びていた魂の緒は切断された。


「ところで……」


 シーちゃんは、寒太を指さす。


「寒太君の悪霊化、かなり進行していますね」

「え? 俺、そんなにひどいの?」

「ええ。悪霊化する寸前ですね」


 シーちゃんは、僕達の方を向き直る。


「このお婆さんを案内したら、先輩を連れてきますので、ここで待っていてもらってもよろしいですか?」

「シーちゃん。待っていてもいいけど、私達は人間なのだから、あまり長時間は待てないわよ」

「分かりました。一時間待っても、私が戻らなかったら、ここから移動して下さい。ただ……」


 シーちゃんは、路地の入り口を指さす。


「くれぐれも瘴気地帯には、入らないで下さいね」


 そう言って、シーちゃんはお婆さんを連れて消えていった。

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