悪霊の養殖
『……優樹。それってどういう事?』
僕の推測を聞いた樒は、スマホの向こうから聞き返してきた。
「つまり、アラティとしては、寒太の肉体は特に必要なかったということさ。奴の目的は、寒太の霊魂を完全に悪霊化して自分の配下にする事。それまでの間、配下の悪霊を憑かせて肉体を生かしていたんだよ」
『つまり、悪霊化するまで寒太の霊魂を現世につなぎ止めておく目的で、肉体を確保していたというわけ?』
「そう。奴らとしては、前回悪霊を大量に死神に連れて行かれたから、新たな悪霊を育てたいのだろうな」
『まるで、悪霊の養殖ね』
養殖という表現は、どうかと思うが……
『なるほど。アラティは嫌悪の魔神。人間の嫌悪感を糧としているのだから、人に取り憑かせて嫌悪感を増大させる悪霊がほしいわけね。嫌われ者の寒太は、まさに打ってつけだわ』
寒太の性格の悪さも、継母によって歪められたものらしいが……ん?
なんで、アラティは寒太に目を付けたのだろう?
寒太は、アラティにとって都合の良い嫌われ者。
でも、なんでアラティには、寒太という嫌われ者がここにいると分かったのだ?
アラティには、嫌われ者を探知する能力でもあるのだろうか?
「樒。ロックさんを呼び出せるかい?」
『まあ、できない事はないけど、すぐには来てくれないと思うわ。死神ってけっこう忙しいし。ロックさんに何か用?』
「アラティの能力について、聞きたい事があるんだよ」
『分かったわ。それじゃあ、帰ったら私の部屋に……おっと! 寒太は私の部屋には、連れていけないわね。じゃあ、私があんたの部屋で待っているわね』
「リビングで待っていてくれないかな。僕の部屋じゃなくて」
『なんで? いいじゃない。あんたの部屋で……ハッ! さては、私に見られて困るような、エッチな本が散らばっているのね。大丈夫よ、そんな事気にしないから』
「ちっがーう! とにかく、僕のいない時に、他人に部屋に入られたくないんだよ」
『いいじゃない。エッチな本がないなら』
「よくない! とにかく僕が帰るまで部屋には入るな」
『優樹……あんた……まさか……』
ん? なんか樒がショックを受けたような顔をしているが……
『……私が、優樹のいない間に、優樹の部屋で金目の物を物色するとでも思っているの?』
「うん。思っている」
「ヒドい! そんなに私が、信用できないの?』
「できない」
『……本当に大丈夫だから……金目の物なんか盗ったりしないわよ』
本当かなあ?
樒との電話を切った後、僕はミクちゃんに電話をかけた。
「ミクちゃん。ちょっと頼みが……」




