緊急依頼
スマホの着信音で起こされたのは、翌朝の日曜日の事。
時計に目をやると午前六時。
誰だよ、日曜日の朝っぱらから……て、芙蓉さん!?
『もしもし、優樹君。お休み中のところをごめんなさい』
「いえいえ、いいですよ。何かあったのですか?」
そりゃあまあ、何もなかったらこんな時間に電話なんかかけてこないよな……まさか! 寒太が見つかったのか?
『実は、緊急で君に指名依頼が出たのよ』
なんだ、違うのか。
「指名依頼? 僕なんかに?」
除霊ができる樒なら、緊急依頼というのも分かるけど……
「ひょっとして樒に緊急依頼があって、僕は見張り役ということですか?」
『いいえ、今回は君だけよ』
「僕だけ? 除霊ができない僕なんかに?」
『ああ! ショタコンの人じゃないから心配しないで。君のよく知っている人よ。というかお得意さまね。緊急で霊と話がしたいそうなの。その人、霊は見えるけど声は聞こえないので』
お得意さまという事は、僕によく仕事を依頼する人だよね。
その中で、霊が見えるけど声は聞こえない人と言ったら……あの人かな?
『優樹君。何をそんなイヤそうな顔しているの? だめよ、お得意さまにそんな顔を見せちゃ』
「だってえ……」
『だっても、あさってもありません。お仕事なのだから、そんなイヤそうな顔しちゃだめ。スマイルスマイル』
そうは言っても……ん? 芙蓉さんは、何で僕の顔が分かったのだ?
「芙蓉さん。これテレビ電話じゃないですよね?」
『え? そうだけど』
「なんで僕がイヤそうな顔したって分かるのですか?」
『え? 気がついていないの?』
「え? 何が?」
ん? そういえば、頭上から霊の気配が……
気配の方へ視線を向けると、そこに身長三十センチほどの巫女さんが宙に浮いている。
これって、芙蓉さんの式神!
「芙蓉さん。プライバシーの侵害です」
『ごめんね。覗き見するつもりじゃ無かったのだけど、君なら私の式神の気配なんて、すぐに分かると思っていたから』
「そうですか。ところで今回の依頼人って、魔入さんですかあ?」
あの人の仕事するのヤダなあ……
『違う! 違う! 魔入さんだって、霊の声ぐらい聞こえるわよ。まあ、あまり弱い霊は無理みたいだけど』
「それじゃあ誰です?」
『六星和子さんよ。知っているでしょ?』
なあんだ、超研の部長さんか。
もしかして、霊子ちゃんに何かあったのかな?
「分かりました。六星さんは、学校で待っているのですか?」
『学校? 違うわ。六星さんは自宅にいるから、そっちへ来て欲しいそうよ』
自宅? 霊子ちゃんは地縛霊だから、学校から離れられないはずだが……
でも、地縛霊でも、まれに離れる事があると聞いたことあるな。
霊子ちゃんが部室を離れて、部長の家まで付いてきちゃったのかな?
「分かりました。ただちに部長さんの家に向かいます。ただ、部長さんには芙蓉さんから釘を刺しておいてもらえませんか」
『釘?』
「入部届を突き出したら、僕はそのまま回れ右して帰ると」
『あはは! まさか、そんなお約束な事はしないでしょ』




