寒太逃亡
「どこ? どこへ消えたの?」
突然目の前から消えたタンハーを探して、婦警さんは周囲をキョロキョロと見回した。
まあ、見回しても無駄だけどね。
ちなみにタンハーは婦警さんの背後で、あっかんべーをしているけど、霊体化しているので普通の人には見えない。
「婦警さん。その子供はバケモノなので、普通の人には捕まえる事はできません」
「え? そうなの?」
バケモノ呼ばわりされたのが気に入らなかったのか、タンハーは僕を睨みつけてくる。
「こらあ! またわらわをバケモノと言ったな! こんな可愛い幼女の、どこがバケモノじゃ!」
だってバケモノじゃん。
「ちなみに奴は婦警さんの背後にいるけど、僕達を解放してくれるなら捕まえられますがどうします?」
ちなみに僕と樒はまだ、屈強な警官数名に囲まれたままの状態。
「え? できるの?」
婦警さんは交番長と思われる警官の元に駆け寄る。
「この二人を自由にして下さい」
「しかし……」
「もう、誘拐の疑いも晴れたのだし……」
「そうだな」
警官達の囲みが解かれると、樒はタンハーに向けて右腕をまっすぐ伸ばした。
「ひええ! こんな可愛い幼女に九字を切る気か! この人でなし」
「いや、人間じゃない奴に「人でなし」とか言われたくないのだけど……」
タンハーはちょこまかと逃げ回って、樒の九字を逃れようとする。
「お巡りさん。これはエアガンですから」
そう言ってから、僕は懐から退魔銃を抜いた。
足止めのつもりで、タンハーの行く手に数発撃ったが……
「ぎゃん!」
あ! 直撃しちゃったよ。 ちょっと可哀想……ん?
タンハーの身体が突然発光する。
「痛いぞよ! 痛いぞよ!」
痛がって路面を転げ回るタンハーには、はっきりとした影があった。
影があるという事は、実体化しているのか?
「あんた。こんなところにいたのね」
婦警さんに再び捕まえられたということは、やはり実体化している。
退魔銃に、こんな効果もあったとは……
「わらわを捕まえたって無駄じゃぞ。すぐに霊体化して……あれ? あれ? 霊体化できない」
霊体化もできないのか?
「退魔銃でも、これができたのね」
「樒。それどういう事?」
「私、いろいろ調べたのよ。霊体化する魔神を捕まえる方法。霊体化している魔神に、九字を切れば霊体化は強制解除されるって」
「そうなの? そのまま霊体化はできなくなるの?」
樒は首を横にふる。
「さすがにそれは無理だけど、二時間ぐらいは効果が持続するそうよ」
そう言ってから樒は、タンハーを捕まえている婦警さんの前に歩み出た。
「お巡りさん。そいつは二時間ぐらいしたら能力が回復して逃げちゃうから、その前に拷問でもなんでもして悪事を白状させちゃって」
「いや、拷問はできないのだけど……でも、ご協力感謝いたします」
ミクちゃんが交番に駆け込んできたのは、その時だった。
「優樹君! 樒ちゃん! 大変だよ!」
なんか、ただ事ではない雰囲気だが……
「寒太君が、逃げちゃったよ!」
え?




