警官に囲まれてしまった
不覚にも、僕と樒は警官に取り囲まれてしまった。
「樒。分かっていると思うけど、抵抗なんかするなよ」
「そんなバカな事しないわよ」
強引に逃げる事もできなくはないが、そんな事をしても無駄。
すでに僕らの顔は監視カメラに映っているし、逃げたらその後でタンハーが僕らの不利になる嘘を並べたてて僕らの立場は余計に悪くなる。
それより、ここに止まって弁明した方がいい。
それに、取り囲んだ警官達の方も、僕らを見て困惑しているようだ。
幼女から『助けて』と言われたから、助けに出てみたが相手は高校生の男女。
幼女はガチの誘拐犯に追いかけられていたのか?
それとも悪ふざけなのか?
判断に迷うところだろうな。
警官達も、僕と樒が逃げられないように取り囲みはしたが、掴みかかってはこない。
まあ、こっちも抵抗の素振りは見せていないからね。
警官の一人が、部下らしき人の方を向いて怒鳴る。
「おい! 婦人警官はまだか!?」
ああそうか。掴みかからないのは、下手に樒に掴みかかったらセクハラと騒がれるからだな。
だから婦人警官の到着を待っているのか。
「ミニパトで巡回中でして」
「サイレン鳴らしてでも戻ってこい!」
いや、サイレンってこんな状況で鳴らしていいのか?
「しょうがないな」
警官はタンハーの方を振り向く。
「お嬢ちゃん。この人達かい? お嬢ちゃんを誘拐しようとしているというのは?」
ん? 今気がついたが、寒太の姿がない!
タンハーめ、ここで僕達を足止めして、寒太だけ逃がしたな。
「そうなの。この人達が、あたしとお兄ちゃんを誘拐しようとしているなの」
おいおいタンハー……僕らの時と態度が全然違うじゃないか。
一人称代名詞を『わらわ』から『あたし』に変えて、語尾も『ぞよ』から『なの』に変えて……おまえはナノ魔神か!
「すごく怖かったなの」
涙を目に浮かべるタンハー。
中身が魔神だと知らなければ、誰でも騙されそうな可愛さだな。
「そうかそうか。もう大丈夫だからね」
警官はタンハーの頭を撫でると、振り返って僕と樒を一瞥した。
「で、君達は、なんで妹さんを追い回していたのだい?」
え? 妹?
「妹さんがどんな悪さをしたか知らないけど、家族間とはいえあんまり過剰なお仕置きをすると、犯罪になっちゃうよ」
あ! 警官は、兄弟喧嘩か何かと思っていたのか。
まあ、この状況見たら普通そう思うだろうね。
「いや、こいつは……」「妹じゃないし……」
僕と樒の抗議を聞かないで、警官はタンハーの方を向く。
「お嬢ちゃんもね、いくら怖いからって、お兄ちゃんお姉ちゃんを誘拐犯とか嘘を言っちゃいけないなあ」
「違うなの! こいつらは、お兄ちゃんお姉ちゃんじゃないなの」
警官は頭を抱えた。
「あのねえ……」
警官は樒を指さした。
「こっちのお嬢さんは、背が高いけど高校生だろ」
「確かに私は高校生ですけど、背が高いが余計です」
「ああ、悪かった」
警官は樒に謝った後、僕を指さす。
「こっちの子は小学生だろう。こんなコンビで誘拐なんて……」
ムカッ!
「高校生です!」
「え? 高校生?」
ええい! これが目に入らぬか! と、ばかりに僕は懐から、原付免許を出してかざした。
警官は、僕の免許証をのぞき込むよう凝視する。
「そ……そうか。高校生か……そいつは悪かった。とにかく……」
警官はタンハーの方へ向き直る。
「お巡りさんには、この二人が誘拐なんて凶悪な事をやる人には見えないのだがな」
「本当なの! こいつらは、あたしのお兄ちゃんを連れて行こうとしているなの!」
警官は僕らの方を向く。
「ああ言っているが、そうなのか?」
「違います。僕達は……」
「待って、優樹」
樒が僕のセリフを遮った。
「私達が、あの男の子を連れて行こうとしていたのは事実です」
樒!? 何を言い出すんだ!?




