問題しか無いことが問題なんだが
バチなら、昨日のうちに当ててやった?
それって!
「昨日の電車事故って、まさか?」
お稲荷様は頷いた。
「夜中のうちに我が眷属達に命じて、踏み切りの線路から詰め物を取り除いておいたコン。そして昨日は、その悪ガキを踏み切りに誘導して、通りかかったところで片足を掴んで線路にはめ込んでやったコン。こうして正々堂々と、バチを当ててやったコン」
それって、正々堂々なのか?
「ただ、悪神に余計な事をされたせいで、関係のない者達が亡くなってしまった事が悔やまれるコン」
「なんだと! じゃあ昨日俺が死にかけたのは、てめえの仕業かよ!」
再び激昂する寒太を、樒が押さえつける。
「寒太君。お稲荷様を怒らせるなんて、何をやったのよ?」
ミクちゃんに詰め寄られ、寒太は考え込む。
「何って……そんな、たいした事はやっていないぞ」
結局、やってるんかい!
「だから、何をやったのよ?」
「祠に向かって、アッカンベーしたり「ばーか」って言ったり……」
「それだけ?」
「祠に石を投げ込んだり、供えてあった供物を摘み食いしたり、そのぐらいの事しかやっていないぞ」
十分にバチ当たり案件だろうが……
「そういえば、饅頭つまみ食いした後で腹こわしたけど、あれもおまえのバチか?」
あのなあ……
「それはバチじゃないコン! 炎天下に放置されている饅頭なんか食ったら、腹こわして当たり前コン!」
そうだろう、そうだろう。
「それに、そんな事でバチを当てるほど、わしの心は狭くないコン」
「寒太君。他に何をやったのよ?」
「いや……他には特に……思い当たることは……」
「お稲荷様。この悪ガキは、いったい何をやらかしたのですか?」
僕の質問に、お稲荷様が答える。
「うむ。いつも、わしにお菓子や油揚げをお供えに来てくれている優しい女の子がいるコン。その女の子から、泣いて訴えられたコン。寒太という悪ガキに虐められて辛い、死にたいと……わしは弱い者イジメする奴は許さないコン。だから、バチを当ててやる事にしたコン」
続いてお稲荷さんは、寒太が女の子にやったイジメの内容を話してくれたが、カッターで服を切り裂くとか、学校の池に落とすとか、それはもう聞くに耐えられないような犯罪レベルの悪行の数々。
どんな慈悲深い神様だって、バチの一つや二つ当てたくなるだろう。
「こんな事を言ったら、怒られるかもしれないけど……」
ミクちゃんはいつになく、深刻そうな顔をしている。
「あたし、寒太君は生き返らない方がいいと思う」
「心配ないわ。ミクちゃん、私もそう思うから。優樹は?」
僕は樒の問いに無言で頷く。
その様子を見ていて、寒太はショックを受けたようだ。
「なんでだよ? なんでみんなそんなヒドい事言うんだよ」
ヒドいのは、おまえだって……
「なんでだよ? おまえら俺が死んでも良いのかよ?」
寒太の問いに対して、僕ら三人とお稲荷様は無言で頷く。
いや、僕らだけでない。
近くで話を聞いていた浮遊霊達まで頷いた。
「そうだね。こんな悪ガキ、生き返ったってろくな大人にならないよ」
そう言ったのは、最初に僕が話しかけた浮遊霊のおばさん。
「ああ、でもここで死なれるのは勘弁」
コギャル風の幽霊がそう言う。
この幽霊も比較的状態が良かったので、おばさんがダメなときはこっちのコギャルに話を聞こうかと思っていた。
「あたいは地縛霊だから、この地から動けないし……こんなウザいガキに近くで地縛霊されるなんて、マジ勘弁。だから、人のいないところで勝手に死んでくれ」
まあ、寒太はすぐに転生するから、地縛霊になる心配はないけど……
その事をコギャルに説明すると……
「マジ!? なんだ、地縛霊にならないならいいや。おい! 寒太とかいうガキ。おまえすぐに死んでいいぞ」
「なんだと! このアマ!」
寒太はコギャルに殴りかかるが、ケンカ慣れしているのか、コギャルは寒太の腕を掴むと捻りあげた。
「痛でで。放せえ!」
「あたいはなあ、おまえみたいな弱い者イジメするガキ見ると最高にムカつくんだよ」
「今、おまえが俺にやっている事は、弱い者イジメじゃないのか?」
「お決まりの屁理屈乙。加害者のクセに、被害者面すんな!」
コギャルは寒太の尻を蹴り飛ばした。
「ちくしょう! なんでみんな俺を嫌うんだよ!? 俺の何が問題なんだよ!?」
いや寒太。問題しか無いことが問題なんだが……




