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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
嫌悪の魔神

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キツネ神

 次の場所で、比較的状態の良い浮遊霊に話しかけてみた。


 五十代くらいの女性だが……


「ごめんね。おばちゃん地縛霊じゃないから、いつもここにいるわけじゃないのよ」

「そうでしたか」

「昨日はずっと、新宿で映画館をハシゴしていたから、ここには来ていないね」


 無料(タダ)で映画や芝居を観られるのは浮遊霊の特権。だから劇場には幽霊が集まりやすいと聞いていたが、本当だったんだな。


「ああ、そうだ!」


 そう言ってから、彼女は小さな(ほこら)を指差す。


 祠の前には、一人の中年男性が突っ立っていた。


「あのおじさんに聞いてみな。あの人は、私が死ぬ前からここにいる地縛霊だから」

「はあ」


 とは言ったものの、おばさんの紹介してくれた地縛霊はあまり状態がよろしくない。


 しかし、せっかくだから声ぐらいかけてみよう。


「あの、すみません。ちょっとお話をお聞きしたいのですが……」


 男の霊は、僕の方を向いて口を開いた。


「ガラスが、雨の様に降ってきたんだ」

「はあ……」

「許さない、こんな……こんなヒドいこと」


 だめだ、こりゃあ。やっぱり話が通じない。


「モンタージュ写真の長髪男。あいつがやったのか? 教えてくれ」


 いや……僕に聞かれましても……


「違う。やったのは桐島」


 困った。話しかけるんじゃなかった。


「君達、何か困りごとかコン?」


 その声は、僕の背後からかかった。


 声の方を振り向くと……


 キツネ? 


 そこにいたのは一匹のキツネ。


 しかし、本物のキツネではない事はすぐに分かった。


 霊的存在だ。それもかなり格が高い亜神レベル。


「ミクちゃん。このキツネは式神?」


 樒の質問に、ミクちゃんは首を横にふる。


「このキツネさんは、そこの祠に(まつ)られているお稲荷様だよ」


 なるほど、だからキツネの姿か。


 お稲荷様は、僕達が話しをしていた地縛霊を前足で指す。


「その地縛霊は、五十年前からそこにおるコン」


 五十年も経っていたら、そりゃあ意識は保てないな。


 てか語尾が『コン』って……キツネだから仕方ないのか?


「その男も、最初の頃はわしが話し相手になっていたコン。しかし、近頃はすっかりボケてしまって話し相手にならないコン」


 それは困った。


「その男に聞きたい事があるなら、わしが代わりに答えてやるコン」


 それは助かる。報酬はやはり油揚げかな?


「その代わり、その男を供養してやってほしいコン」


 そんな事でいいのなら……


「わっかりました」


 僕はスマホを取り出すと、霊能者協会にこの状況をメールで伝えた。


 程なくして返事が来る。


「霊能者協会に、供養依頼を出しました。近日中に協会の者が供養に来ます」


 たぶん来るのは母さんだと思うけど……


「それで、おまえさん達が聞きたいことは……」


 お稲荷様は、寒太を前足で指す。


「この悪ガキの事かコン?」


 悪ガキ呼ばわりされて寒太は激昂した。


「悪ガキとは何だ! このクソギツネ!」


 次の瞬間、樒のパンチが寒太の頭に炸裂。


「口の効き方に気をつけろ! この方は神様よ!」


 頭を押さえている寒太に、ミクちゃんも詰め寄る。


「そうよ、寒太君。失礼な事言うと、バチが当たるわよ」


 二人が寒太を折檻している間に、僕はお稲荷様の方へ行く。


「すみません、あいつバカなので。僕らでお仕置きしておきますから、どうかバチの方は……」

「バチの事なら、心配しなくていいコン」

「感謝します」

「バチなら、昨日のうちに当ててやったコン」

「それは良かっ……」


 え?

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