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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
嫌悪の魔神

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死神の慈悲2

「あの女の子が、踏み切りの非常停止ボタンを押すかどうかにおまえの運命はかかっている」

「え! そうなの! 早く言ってよ」


 少年は少女に向かって再び叫んだ。


「有村!!  非常停止ボタン押せ」


 少女は顔に微かな怒りを浮かべる。


「バカか、おまえは」


 死神はあきれ顔で言う。


「え? だって……有村がボタンを押せば、俺は助かるんだろ?」

「そうだけど、それが人にモノを頼む態度か?」

「え? いや、俺は、あいつにはいつもこういう言い方しているし……」

「そんなんじゃだめだな。ちゃんと頼んでみろ」

「わかった」


 少年は再び少女に声をかける。


「早くしろ!! 俺が死んでもいいのか!」


 だが、少女は何もしようとしない。


「救いようがないバカだな。『死んでもいいのか』だと? いいと思っているから、あの子はおまえを助けないんだろ。そんな事も分からんのか?」

「なんで?」

「マジで分かんねえの? おまえは、あの子を毎日虐めていただろうが」

「それは……」

「さっきも、男子トイレに連れ込んで脱がそうとしたよな。このエロガキが」

「なんで知ってるんだよ?」

「死神には、これから死んでいく奴が今までやっていた悪行が見えるのさ」

「でも……だからって俺を見殺しにしなくても……」

「はあ!? おまえ分かってねえな。おまえは殺されて当然の事をやっていたんだぞ。自覚無いのか?」

「ちょっとイビったぐらいで……」

「おめえはちょっとのつもりでもな、あの子は死ぬほど辛かったんだ。分かるか? あの子の左腕にはな、リストカットの跡が残っている。全部おまえにイビられた日にやったんだよ」

「え?」

「おまえ助かりたかったらよ。謝ってみろよ。おまえの死はまだ確定していない。誠意を込めて謝れば、あの子も緊急停止ボタン押してくれるかもよ」

「わかった」


 少年は少女の方を向いた。


「有村。さっきはごめん。だから助けて」

「助けたら、また虐めるんでしょ」

「う……」


 少年は口ごもった。


「おい」


 死神は少年の顔をのぞき込み言った。


「まさかと思うが、あの子がおまえを助けてくれた後も虐めをやめる気はないのか?」


 少年は無言でうなずく。


「バカ!! 死んじゃえ!!」


 少女は踵を返して走り去っていく。


 その瞬間、死神のスマホに表示されていた死亡確率は九十五から百に変わった。


「あーあ。死が確定しちゃった。バカだな」

「やだよ。俺死にたくないよ」

「今更遅い。おまえの人生の失敗は、他人の痛みを理解しようとしなかったことだ。次の人生では、もっと思いやりのある人間になることだな」

「そんな……なんとかならないの?」

「ならんな。死ぬまでの短い間、おのれの悪行を反省してろ」


 電車の音が近づいてくる。


「せめてもの情けだ。痛みはないようにしてやろう」


 死神が少年の頭に手をかざした。


「何をしているの?」


 少年の質問には答えず、死神は手をゆっくりと持ち上げる。


 手の動きに合わせて、少年の視界は上昇していく。


 最初は自分の体が持ち上がっているのか思ったが、そうではない。


 少年の肉体は、今でも線路の上で立ち往生している。


 ただ、少年の肉体から幽体が分離していたのだ。


「ええ? なんで?」

「魂と幽体を肉体から分離した。これで肉体の苦痛を受けることはなくなる」

「でも、死ぬことに変わりないのでしょ?」

「当たり前だろ。まだ何か言いたい事あるのか?」

「俺……地獄に行くの?」

「ほう」


 死神は感心するような顔をした。


「地獄に落ちるような事をしていた自覚はあったのか」


 少年はコクっと頷く。


「安心しろ。おまえは天国にも地獄にも行かない。このまますぐに転生する」

「え? 転生するの? 異世界?」

「なわけないだろう。なろう小説じゃあるまいし。おまえの転生先は日本国内。異世界どころか、外国にも行けない。俺に分かるのはここまでだ」


 死神がそう言った直後、死神のスマホに異変が起きた。

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