計画どおり
もふ!
ん? 倒れたところで、何か暖かくて柔らかい物に顔が包まれた。
「社君! しっかりして!」
先生の声?
顔を上に上げると、先生の顔がすぐそこに……
ということは、この暖かくて柔らかい物は先生の……
「あわわわ!」
いけない! 離れないと、わいせつ罪に……
うわ! 足がもつれる。
「危ない!」
倒れそうになったところを、先生に抱き上げられた。
「まだ歩くのは無理だろう。私がしばらく抱っこしてあげよう」
「いえ……大丈夫です。恥ずかしいから降ろして下さい」
「恥ずかしがるな。私にお姫様抱っこされるのは、初めてでもないだろう」
いや、何回されても恥ずかしいし……そんな事より……
「あ……あの……」
「ん? どうした? 社君」
「先生の……胸が……当たっているのですけど……」
「おお! これは気が付かなかった。偶然だろ」
そうだよね。偶然だよね。
「先生」
樒が疑わしい視線をこっちへ向けている。
「当たっていたのではなく、当てていたのではないのですか?」
「そんな事はない。偶然だと言っているだろ」
「そうですか。偶然ですか。それより、先生。いつまで優樹を抱いているんです? 教師が生徒にそういう事を……」
「何を言っている。これは救命行為だ」
「そうですか。救命行為ですか。では、私も救命行為を」
樒はウエストポーチから小瓶を取り出す。
あの瓶って……
「優樹。ミクちゃんからもらってきたお薬よ。飲める?」
「あ……ああ」
「え? 自力では飲めない。それでは仕方ないわね」
え? いや、僕は飲めないとは……
ちょっ! 樒! お前が飲んでどうする?
いや、飲んでいるのではない。口に含んでいる。
ま……まさか……
先生に抱き上げられている僕の顔を、樒はガシッと掴み、口を近づけ……
………
……
…
「神森さん! なんて事を……」
「なんでしょうか? 先生、私のやった事に何か問題でも?」
「不純異性交遊だわ」
「違います。自力で薬を飲めない優樹に、口移しで薬を飲ませたのです。立派な救命行為ですわ」
「ぐぬぬぬ。仕方ない。今回の戦いは引き分けね」
何の戦いですかあ!?
あ! そうだ! 樒に謝っておかないと……
「樒、ごめん」
「な……なんで謝るのよ?」
「その……樒から預かっていたスマホ……タンハーに取り返されて……」
「え? タンハーがあれを持って行ったの?」
「そうなんだ。すまない」
あれ? 樒、怒るどころかニヤリと笑っているぞ。
「ふふふふふ! 計画通り」
え?




