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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
事故物件2

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退魔札

「ちゅー!」


 ネズ子は魔入さんの足から離れると、みるみるうちに人化していった。


 前は、OL姿や女子高生になっていたけど、今回はなんの姿になるんだ?


 と思って見ていたら巫女装束。歳は十代後半ぐらい。


 ただし、頭にはやはり大きなネズミ耳がついている。


「優樹君。助けに来たでちゅ。立てまちゅか?」

「あ……ありがとう……でも、どうしてヒョーさんはこの事が分かったの?」

「ヒョー様は、優樹君のストーカーでちゅ。こんな事があればすぐに分かりまちゅ」


 ありがたいのだか、ありがたくないのだか……


 とにかく今は……


「ヒョーさん。ありがとう」


 今は礼を言います。でも、怖いから僕につきまとわないで……


「そこのネズミ女。おまえ式神じゃな。なぜ、わらわの邪魔をするぞよ?」


 ネズ子はタンハーの方を振り向いた。


「あたしはネズ子。呪殺師ヒョー様が使役する十二の式神の一つでちゅ」

「なに! 呪殺師ヒョーじゃと!?」

「ふふふ、驚いたでちゅか?」

「誰じゃ? そいつは」


 一瞬、周囲はどうしようもない沈黙に包まれた。


 悪霊アヤメに取り付かれている魔入さんが、タンハーにそっと耳打ちする。


「タンハー様。呪殺師ヒョーとは……」

「何!? 金で呪殺を請け負う殺し屋じゃと! なんて悪い奴ぞよ」

「悪神に、悪い奴呼ばわりされたくないでちゅ」

「何を言うぞよ。わらわは確かに悪神じゃが、わらわがやっていることは人の法律では裁けぬぞよ。よって、わらわは法律上悪ではないぞよ」

「ヒョー様の呪術も科学的には証明できないので、法律では裁けないでちゅ。だから法律上悪ではないでちゅ」


 いや、どっちも人の道としてダメだと思うけど……


「む? そうなのか? アヤメ」

「タンハー様。呪殺に殺人罪は適応できません。ですが、脅迫罪になった実例があります」

「脅迫罪になるのか。やい、ネズミ女。やっぱりおまえは悪い奴ぞよ。この脅迫犯め」

「そんな事どうでもいいでちゅ」

「よくない。いーけないんだ♪ いけないんだ♪ 脅迫したら♪ いけないんだ♪」

「変な替え歌するなでちゅ」

「ふん。とにかく、おまえは悪い奴ぞよ。今すぐ警察を呼んでやるぞよ」


 スマホを取り出したタンハーを、アヤメが慌てて止める。


「おやめ下さい。タンハー様。さっき、無免許運転で、補導されそうになったのをお忘れですか?」

「うわ! そうじゃったぞよ。危うく罠にはまるところじゃったぞよ」


 いや、罠じゃないだろ。


 ん? ネズ子が僕に紫色の巾着袋を差し出した。


「優樹君。この中に退魔札が入っているでちゅ」

「退魔札?」

「魔物を退けるお札でちゅ。式神であるあたしは触れる事ができないので、優樹君が使って欲しいでちゅ」

「ありがとう」


 巾着を開くと、数枚のお札があった。


 その中の一枚を引き抜く。


 ええっと……これをどう使えばいいのだろう?


 キョンシー映画だと導師がお札を投げると、ピューっと飛んで行ってキョンシーの額に貼り付いたりするけど……


 ペラペラの紙切れが、あんなふうに飛ぶはずないし……


 とりあえず、お札を手に取って文字の書いてある方を悪霊とタンハーのいる方に向けてかざした。


「う!」「ひ!」


 タンハーと悪霊が怯むのが分かる。


 効果はあるようだ。


「優樹君。今でちゅ」


 ネズ子が僕の手を握って駆けだした。


「どこへ行くの?」

「家の中へ入って結界を張るでちゅ」


 僕はネズ子に手を引かれるままに、家の中に入っていった。

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