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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
事故物件2

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純真な乙女? どこに?

 背後から差し込まれた魔入さんの腕に、僕は首と胸を押さえつけられて身動きが取れなくなってしまった。


「放せ!」


 と言ったところで、悪霊が放すはずがないか。


 悪霊に憑依された人間は普段より強い力が出せるらしく、魔入さんが僕を抱きしめる力はハンパなく強かった。


 もがいてもふりほどけない。


 いや、僕が非力すぎるという説もあるけど……


「魔入さん! 目を覚まして! 悪霊なんかに負けないで!」


 悪霊に憑依された人が、自力で悪霊の束縛を断つことも希にある。


 それを期待して声をかけてみたのだが……


「無駄よ、坊や。この女に、坊やの声は届いていないわ」


 無理なのか?


 魔入さんも霊能者だから、少しは期待したのだけど……


 いや……


「本当に声が届かないなら、そんな事言う必要ないよね」

「あら? 分かっちゃった。でも、声が届いても無駄。私は、この女の願望を利用しているのだから」


 願望?


「魔入さんが、どんな願望を?」

「君をイジメたいみたいよ。何か恨まれるような事しなかった?」


 う! やっぱり、前回の仕事でお爺さんの霊を呼び出した事で恨まれたのかな?


 恨まれるだろうな。僕も悪意でやったし……


「という分けで、そろそろ君の精気をいただくわ」

「ひいぃぃ!」


 悲鳴を上げる僕の目の前に、突然タンハーが降りてきた。また霊体化したのか?


「待つのじゃ! アヤメ! スマホの回収が先じゃ」

「ええ! そんなの精気を吸い尽くして動けなくしてから、ゆっくり探せば……」

「だめじゃ! おまえ、こいつの精気を吸うときに、エッチな事をするのじゃろ」


 な……何をする気だ?


「ええ、しますけど何か?」

「そういう事を、純真な乙女の見ている前でするな!」

「え? 純真な乙女? どこに?」

「ここにいるじゃろう」

「ええ!? タンハー様って、純真な乙女だったのですか?」

「この可愛い幼女の姿を見て分からぬのか!」

「いえ、見た目はそうですけど、中身は魔神ですし……」

「とにかく、わらわの見ている前でやるな。わらわがスマホを回収して、遠くへ行ってからゆっくりやれ」

「わかりました。ではまず坊やの服を脱がせて裸にしましょう」


 やめてえ!


「だから、わらわの見ている前でそういう事するな! ポケットに手を入れれば済むことじゃろ」

「ええ! いいじゃないですか」

「だめじゃ! だいたいなんでおまえは、そうやってエッチい方向に行こうとするのじゃ」

「そんな事言われましても、私色情霊ですしおすし」

「とにかく、おまえはそいつを押さえつけているだけでいい。わらわがスマホを探す」

「分かりました」


 タンハーが僕の方へ手を伸ばそうとしたその時……


「ぎゃあ!」


 魔入さんが突然悲鳴を上げて、僕を手放した。


 何があったのだ?


「痛い! 痛い!」


 見ると、魔入さんの足首にネズミが噛みついている。


 これはネズ子!

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