悪霊本体のお出ましか?
退魔銃を構えた時、結界はびっしりと蔦に覆われ、玄関からの光は完全に遮られていた。
スマホのライトで照らしてみると、それはまるで緑の壁。
僕がトリガーを引くと、退魔銃から放たれた弾が緑の壁に小さな穴を穿った。
穴から光が射し込む。
さらに退魔銃を撃ち続ける。
一発撃つ度に穴はどんどん増えていき、やがて緑の壁はほとんど消え去っていった。
しかし、まだ新たな蔦が延びてくる。
「うん、良いわね。これは絵になる」
退魔銃を撃ち続ける僕を抱き上げた状態で、魔入さんは嬉しそうにスマホを操作していた。
ていうか、いい加減降ろしてほしいのだけど……
「魔入さん。いつまで僕を抱き上げているんですか? もう降ろして下さいよ」
「だめよ。君がこうやって私にお姫様抱っこされた状態で、退魔銃を撃つ姿が良い絵になるのだから」
よく分からん趣味だなあ。
「そうですか。でも、重いでしょ」
「そうね。さすがに腕が疲れてきたわ」
魔入さんは僕を床に降ろした。
「食らえ! 変態蔦!」
結界の内側から、僕は退魔銃を撃ち続けた。
蔦は何とか僕らを絡め捕ろうと迫って来るが、結界を越えられない。
さっきと違ってかなり有利な状況。
逃げるなら今のうちだが……
「うんうん。いい調子ね」
なんでこの人、逃げようとしないの?
できれば置き去りにして逃げ出したいところだけど、結界はこの人が張っているのでそれはできない。
「いいわ! いいわ! これならばっちりよ」
「魔入さん。何がそんなにいいのですか?」
退魔銃を撃ちながら、僕は尋ねた。
「さっきドローンが撮った君の映像。美少女が蔦の化け物に蹂躙され、もがき苦しむ様子。中々いいリョナシーンだわ」
悪趣味な。
「リョナシーンって、ヒロインが痛ぶられる様子でしょ。僕は男ですよ」
「あらあら? 頭を黒髪ツインテールにして、白いプリーツスカートを履いて白いブラウスの上からベストをまとった男なんているかしら?」
あんたが、無理矢理こんな格好にさせたんだろうが!
「これは視聴率稼げるわよ」
「そんなもんで、視聴率稼いでどうすんですか!? 魔入さんの番組は、オカルトが売りなのでしょ!」
「大丈夫よ。蔦の化け物も映っているから……お! パンチラも……」
そんなもん見て誰とくだよ!
「ん? ちょっと社さん。何よ、これは?」
「なにか?」
「スカートの下に履いている物よ。なんで半ズボンなんて履いているのよ?」
「まさか僕に、女物の下着まで履けとでも?」
「そこまでしなくてもいいけど、せめて白いブリーフとか……」
「恥ずかしいから嫌です」
「まあ、いいか。どうせパンチラは、モザイクかけるから」
もちろん、魔入さんとこんなやり取りをしている間も、蔦は僕たちに向かって来ていた。
それを一本一本退魔銃で迎撃しているのだが、退魔弾だって無限じゃない。
早く逃げないと……
「魔入さん。そろそろ、逃げましょうよ」
「逃げる? 何を言っているの。これから奥へ行って悪霊の本体を見つけるのよ」
はあ? なに言ってんだ? この人は……
くぐもった声が聞こえてきたのはその時……
「出ておいで~」
魔入さんは立ち止まって周囲を見回した。
「社さん。今の声聞こえた?」
「ええ」
いよいよ悪霊本体のお出ましか?




