蠢く蔦
ヘビの様にうねりながら、蔦は僕らに迫っていた。
「ちょっと! 私は長い物は苦手なのよ! なんとかしてよ!」
んな事言ったって……僕だってヘビとかミミズとか苦手だし……
とにかく、これじゃあ玄関から逃げる事はできないな。
チラっと時計に目を走らせたが、樒が来るまでまだかかりそう。
「魔入さん。他に、出口はないのですか?」
「台所に、裏口があるはずだけど……」
「では、台所へ」
「でも、そっちに行っても大丈夫かしら?」
「え? なんで?」
「あれって、どう見てもこの家を覆っていた蔦よね」
「そのようですね」
「この家の窓も裏口も、全部これで覆われていたわよ」
うわわわ! 逃げ道なし!
そんな事をしている間に、蔦は眼前まで迫ってきていた。
「来るな!」
特殊警棒で払いのけるが、次から次と蔦は押し寄せる。
「うわ!」
左腕に絡みつかれた。
「このお!」
絡み付いた蔦を払おうと警棒を振り上げた。
「あれ?」
右腕を振り下ろしたが、握っていたはずの警棒がない。
振り下ろす寸前に、警棒が右手からすっぽ抜けてしまったのだ。
上を見上げると、ポリエステル製の特殊警棒は蔦に絡め取られている。
「わあ! 返せえ! どろぼう!」
そんな事言っても返す分けはなく、さらに太い蔦が僕の胴体に絡み付いてきた。
「このお!」
ベストの内側に隠してあったショルダーホルスターから抜いた退魔銃を、太い蔦に押し当ててトリガーを引く。
バシュ!
退魔銃を押し当てた場所から、半径十センチほどの範囲にある蔦が音を立てて消滅した。
退魔弾が利く!?
という事は、この蔦は実体ではなくて霊的物質。
これなら……
左腕に絡みついている蔦に向けて撃った。
蔦は消滅し、左腕は自由になる。
さらに退魔銃を撃ちまくった。
どうやら退魔弾は直撃しなくても、半径十から二十センチ以内を通過しただけでも効果があるようだ。
退魔銃を撃つたびに、蔦がボロボロと崩れていく。
よし! 利いている。
「うわ!」
しまった! 背後から忍び寄ってきた蔦が、右腕に絡み付いてきた。
ならば銃を左手に……
あかん。
また左腕に絡みつかれた。。
退魔銃にも絡み付こうとしたが、蔦は銃に近づいただけで触れる事なく消滅してしまった。
しかし、銃はなんとか手放さずに済んだけど、これじゃあ撃つこともできない。
銃を奪うことは諦めたようだが、さらに多くの蔦が僕の両腕に絡み付いてくる。
「放せ! 化け物!」
と言ったところで、放してくれそうもない。
そのまま僕は蔦に身体を持ち上げられて、足が床を離れて宙吊り状態に……
両手を上にあげバンザイした状態になった僕の腰に、さらに別の触手が絡み付き持ち上げられる。
こいつ、僕をどうする気だ?
左右の足に別々の蔦が絡みつく。
そのまま持ち上げられた。
うわわ! スカートがめくれる!
まさか、こいつは色情霊?
僕を女だと思ってレイプしようとしているのか?
「よせ! 僕は男なんだ! そんな事をしても……」
は! 魔入さんは大丈夫か?
何のかんの言っても、あの人は女だ。
僕よりも、魔入さんの方が危ないじゃないか!
「魔入さん。大丈夫ですか!?」
「大丈夫よ。今のところは」
え?
声の方に目を向けると、魔入さんは何やら光る幕のような物に包まれていた。
蔦は、その幕に触れると消滅してしまう。
なんだ? あの幕は?




