テレビ局の魔神姉妹
とあるテレビ局。
当然の事ながら、ここは関係者以外立ち入り禁止である。
その立ち入り禁止の建物に、一人の幼女が忍び込んだ。
もちろん、その幼女はIDカードなど所持していない。
所持していないが、自在に身体を霊体化して壁を抜けてくる幼女の侵入を防ぐことなどできなかった。
「ええっと……ラー姉の部屋はどこじゃ?」
局内の通路を、幼女はキョロキョロと見回しながら進む。
途中で何人かの人とすれ違うが、子役タレントと思ったのか、誰もこの幼女を怪しまなかった。
「おお! ここじゃ!」
一つの部屋の前で立ち止まると、周囲を見回し人がいない事を確認してから、幼女は身体を霊体化してドアをすり抜けた。
部屋の中にいたのは二十代半ばの女が一人。
そのネームプレートには『降真 羅亜香』と書かれている。
ドアは羅亜香の背後にあるにも関わらず、彼女は幼女の侵入を察知していた。
羅亜香は振り向きもしないで声をかける。
「ハーちゃん。そのドアには鍵なんてかかっていないから、普通に入って良かったのよ」
幼女の名は降真葉子。通称ハーちゃん。
羅亜香の妹である。
人間の身体こそまとっているが、その魂は渇愛の魔神タンハー。
そして姉の羅亜香は、快楽の魔神ラーガをその身に秘めている。
「え?」
「そもそも、今回は局内に入るのにIDを発行する暇がなかったから、局に入る時は霊体化しろと言ったのよ。局内に入ってしまえば、普通に来て良かったの」
「なんじゃそうだったのか」
「だいたいねえ、家のテレビで『六道魔入の怪奇レポート』を録画できていれば、あんたをここへ呼ぶ必要はなかったのよ」
「だったらラー姉が、USBメモリに映像を入れて持って帰れば済む事なのじゃ」
「私は今、ディレクターの仕事が忙しくて帰れないの。それにもうすぐ、六道魔入と打ち合わせをするので、その前に確認してほしかったのよ。だいたい、家のハードディスクがなんで一杯になっているのよ? あんたいったい何を録画していたの?」
「そんなたくさん録画していないぞよ。『異世界おばさん』と『オーバードーロ』と『異世界ドラッグストア』と『見えない子ちゃん』と『スパイ家族』と『秀才王子の黒字国家破産術』と『働く血球』と『異世界ファミレス』と後は……」
「そんだけ録画すれば、ハードディスクが一杯になるわよ!」
「妾だけのせいじゃないぞよ。亜羅姉も映画を録画していたぞよ」
羅亜香は、疲れたような表情を浮かべた。
「もう、いいわ。時間がないから映像を見て」
そう言ってリモコンを操作してテレビをつけ、録画を再生した。
画面に現れた番組は『六道魔入の怪奇レポート』。
「ん? ラー姉が作っている番組じゃな」
「そうよ。あんたに出演者の顔を確認してもらおうと思って、本来ならモザイクで隠さなきゃならない出演者の顔を事故に見せかけて見えるようにしたのに、録画できていなかったなんて……」
「まあいいじゃないか。こうして妾が直接見にきたのだから」
「あんたねえ、モザイクを外した事で私はプロデューサーから怒られたのよ」
「それはラー姉が悪いぞよ」
「なんですって?」
その時、テレビに一人の少年が映った。
着ている服は高校の制服のようだが、その身長は小学生並。
顔は女の子のように可愛らしい。
その姿を見たとたん、幼女の顔色がサッと変わった。
「おお! こやつは」
「知っているの? ハーちゃん」
「妾をイジめた大女の仲間じゃ」
「そう、この子だったのね。ハーちゃんには、この子の顔を確認してもらいたかったのよ」
「こやつがどうしたのじゃ?」
「この前、六道魔入が雇った霊能者がこの子よ。彼女の話だと、この子の仲間が幽霊にも使えるスマホを持っていたそうよ」
「ぬわにい! では、あのスマホは、こいつらが持っていったのか。飯島露が悪霊化したら、自動的に妾の手元に戻るはずだったのに……」
「とにかく、あのスマホを取り返さないと、私達の活動に支障が出るわ。取り返すから、手伝いなさいね」
「分かったのじゃ」
樒「また事故物件やるの?」
優樹「またというか……前回はプロットを半分しか消化しないで終わらせてしまったんだって」
樒「じゃあ、今回はプロットの残り部分を消化するわけ?」
優樹「そうらしいね」
樒「でも、なんで前回は半分で終わらせちゃったの? 『モニ系』が忙しかったから?」
優樹「いや。後半部分にR18シーンが入っていたから。このまま書くと運営から怒られると判断したみたいだよ」
樒「あらま」




