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霊能者のお仕事  作者: 津嶋朋靖
事故物件

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122/289

六道 魔入

 すでに、この部屋の除霊は済んでいたと言うのか?


「樒。いつこの部屋の除霊をやったというのだ?」


 こいつが除霊の仕事をするときは、僕も同行する事になっているはずなのに……


「優樹はあの日、病院に行っていたわね。だから代わりに、あんたのお母さんが私と同行して除霊をやったのよ」

「誰の依頼で?」

「自殺した人の家族。この部屋が、事故物件になっている事をネットで知って、依頼してきたそうよ」

「なんで先に言わなかった?」

「だから、私はさっき優樹からのメールを見るまで、現場の住所を知らなかったのよ」


 そうだった。


「待ち合わせ場所を聞いた時は、前回の現場に近いなあとは思ったけど、まさか同じ場所だとは思わなかったわ」


 今回の件、最初から樒に住所を教えておけば済んだ事だったのか。


「それでどうなの? 霊は残っていたの?」


 僕は首を横にふった。


「浮遊霊一ついない」

「でしょうね。除霊した後、念のために鬼門と裏鬼門にお札を貼っておいたし」


 やっぱり、結界も張っていたのか。


「除霊したですって!?」


 ん? 千尋さん、どうしたのだろう?


 血走った目で樒を睨みつけて……


「はい。除霊しました。サービスで結界も張って起きました」

「結界!?」

「はい。ああ、結界はサービスですから、料金はけっこうです。料金請求したりなんかすると……」


 そう言って樒は僕を指さす。


「このマジメっ子が怒るから……」


 だが、千尋さんはなぜか怒っていた。


「余計な事するんじゃないわよ!」

「は?」


 千尋さんの剣幕に、樒も気圧される。


 しかし、なぜ千尋さんは怒っているのだ。


「どうりで、幽霊が見えないと思ったら……私の能力が消えてしまったのかと心配になっちゃったじゃないの!」


 能力? あ! もしかして……


「千尋さん。ひょっとして幽霊が見えるのですか?」

「そうよ。あなた達ほど強い能力じゃないけど、私も霊能者よ」

「そうだったのですか」

「それなのに、この部屋に入居してから浮遊霊一つ現れないし、能力が消えてしまったのかと思ったわ」


 別にいいんじゃないかな? 霊なんて見えなくても実生活でそんなに困らないし……


 僕や樒みたいに、能力を仕事に生かしているなら別だけど……


 そんな事より……


「千尋さん。それじゃあ、本当は幽霊なんて怖くないのですよね?」

「ち!」


 今、舌打ちした。という事は、さっき怖がっていたのは演技……


 なんのためにあんな事を……まさか? この人もショタコン?


「おや?」


 樒が千尋さんに怪訝な視線を向けた。


「な……何よ?」

「お姉さん。どっかで見た顔ね」


 樒がそう言った途端、千尋さんは顔を背けた。


 樒の知り合いだったのかな?


「し……知らないわよ。あんたなんて、会った事ないわよ」

「いえ、直接会ったのではなくて、雑誌か何かでお見かけしたような気が……」


 有名人なのか?


「あれ? このメガネ」


 化粧台の上に置いてあった大きなメガネを、樒は拾い上げた。


「ちょっと! 勝手にさわらないでよ」


 樒は千尋さんにメガネを差し出した。


「じゃあ、これをかけて下さい」

「う……」


 千尋さんは渋々メガネをかける。


「これでいいかしら?」

「やっぱり! 六道(ろくどう) 摩入(まいり)さん」


 六道 魔入? 誰?

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